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「僕にスポットライトはいらない」宮西尚生の達観した野球観

 

プロ11年目で初のファン投票によるオールスター出場が決まった宮西


 残してきた実績に対して過小評価とまでは言わないが、もっと評価され、スポットライトが当たってもいい左腕だと思う。

 日本ハム宮西尚生、33歳。プロ11年間で先発登板は一度もなし。すべて中継ぎで、しかも入団から10年連続で50試合以上登板を続けている。6月15日のヤクルト戦(札幌ドーム)では、巨人山口鉄也以来となるプロ野球史上2人目の通算300ホールドポイントも達成、さらにホールドの日本記録の更新も目前に迫っている。栗山英樹監督も「ミヤには感謝しかないし、絶対的に信頼している」と賛辞を惜しまない。

 そんなチームを献身的に支え続けてきた左腕に、うれしいニュースが届いた。6月25日にオールスターゲームのファン投票の最終結果が発表され、中継ぎ部門で初選出されたのである。2015年に一度出場しているが、そのときは監督推薦。ファン投票ではプロ11年目で意外にも初めての選出となった。

「本当にいい中継ぎ(投手)が多い中で選んでいただき、すごく感謝しています」と控えめなコメントを寄せたが、監督推薦ではなく、ファンによる投票での選出には感慨深いものがあったに違いない。

 宮西にとって11年目はいろんな意味で、逆襲を誓う再出発のシーズンとして始まった。昨年は防御率3.32でルーキーイヤーの(4.37)に次ぐ自己ワーストに終わり、「チームに迷惑をかけてしまった」と責任を背負った。習得したFA権の行使もせず「この左腕をファイターズに捧げたい」と残留を決め、並々ならぬ決意で開幕からマウンドで奮闘している。

 グラウンド内外でチーム内での存在感は絶大であり、時には投手コーチのように若手たちを叱咤激励し、豊富な経験やアドバイスを伝える役割も担っている。そんな男の野球観がにじみ出て、つむいだコメントの重みや深さについていろんなことを考えさせてくれたのが次の言葉だ。

「中継ぎがニュースになるのは打たれたときだけ。毎試合目立つことなく終わるのが一番いい。僕にスポットライトはいらない」


 そのスタイルは引退するまで変わることはないだろうが、せめて晴れのオールスターの舞台ぐらいは、もっとこの男にまばゆいスポットライトが注がれてほしいし、中継ぎひと筋で培ってきた百戦錬磨の技とメンタリティーが詰まったピッチングに注目してもらいたいと思う。

文=松井進作 写真=BBM
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