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立浪和義コラム

巨人・岡本和真選手にほしい“きっかけの一打”/立浪和義コラム

 

完全覚醒を感じた一打もあったが……


6月23日、内角高めを見事にホームラン


 6月2日のオリックス戦(京セラドーム)から巨人の89代四番打者となったプロ4年目の岡本和真選手。
 一時は打率を3割4分台に上げ、打率リーグトップにも立ちましたが、交流戦明けから、しばらくして大不振に陥り、7月4日現在まで31打席連続無安打です。

 ただ、それでもいまだ、打率.298。ここまでの“貯金”がどれほど大きかったか分かります。

 待望の若手四番打者でもあり、いまのところは高橋由伸監督も四番から外さずに使っていますが、このまま不振が長引くと、打順を下げて楽に打たせようという起用になるかもしれません。

 突然の不振の理由としては、やはり厳しい攻めが増えていることが挙げられます。実質1年目ですし、ここまでしっかりマークされた経験はないはずです。決して甘い球がないわけではありませんが、不思議なもので打ち損じが増えてくると、ついつい難しい球に手を出してしまいがちです。

 私が四番を打ったのは、当時四番だったレオ・ゴメス選手の故障もあってですが、2002年途中から03年と30歳台になってからです。打者のタイプとして四番になったからといってホームランを量産できるわけではありませんし、「いかに確実にヒットを打つか」と私自身のバッティングを追い求め、たまたまでしょうが結果もよかったので重圧というより、楽しかった記憶があります。

 打者のメンタルは結果にも左右されます。岡本選手も1本のホームラン、1本のヒットで再び上昇していく可能性も十分にあります。

 技術面では間違いなく、成長しています。昨年までの岡本選手は、ややカカト方向に重心がかかり、特に外側に逃げる変化球を追いかけるように崩されるもろさがありましたが、今季はしっかり自分のポイントまで引き付けることができていました。

 プラス、私が岡本選手自身の成長を感じたのは、6月23日、東京ドームのヤクルト戦でハフ投手からホームランを打った場面です。

 左腕のハフ投手の球は、インサイド高めのカット気味の球でした。右打者の岡本選手にしたら、体に近く食い込んでくるので非常に厄介な球です。詰まるか、それを恐れ、バットが早く出るとファウルになる球ですね。

 岡本選手はそれを引きつけ、結果的にはやや詰まった形になりましたが、基本どおり体の近くをバットが通るスイングは崩れず、持ち前のスイングスピードと前のフォロースイングの大きさで押し込むことができていました。

 詰まった当たりをホームランにできたというのは、バッターにとってすごく自信になります。
 野球をやられていた方なら分かると思いますが、バッターには、潜在的に「詰まるのが嫌だ」という思いがあります。
 基本は内角球に対してですが、芯に当てられず、手が痛かったり、自打球を受けたりしているうちに、だんだんそうなっていくんでしょうね。

 詰まりたくないからバットが早く出過ぎたり、体が早く開き過ぎ、そこで外側に投げられると、追いかけるようなスイングで崩されます。

 それが「これだけ詰まってもホームランにできた」という経験があると、気分的にも楽になり、悪い癖が出にくくなります。
 
 あのホームランを見たときは、完全に一皮むけたかな、と思いましたが、やはりバッティングは簡単ではありませんね。

 いまは毎日無我夢中だと思います。四番というのは、時にチームの勝敗を背負わねばならず、大変な打順ではありますが、なんとか不振を抜け出し、リーグを代表するような四番バッターになってほしいと思います。

写真=BBM
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