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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

都市対抗で“Honda勢”が描く最高のシナリオ

 

Honda熊本の主将・川嶋は日南学園高、明大を経て入社6年目。今年から主将を務め、強いリーダーシップを発揮している


 社会人野球のメーンイベントである第89回都市対抗野球大会は7月13日、東京ドームで開幕する。

 2018年、会社創立70周年のHondaからはHonda(狭山市)、Honda鈴鹿(鈴鹿市)、Honda熊本(大津町)と3チームすべてが出場する。2009、14、17年に続く4度目のそろい踏みであり、「Hondaレッド」旋風が期待されている。

 32チーム(前回大会優勝のNTT東日本は推薦出場)が名乗りを上げるが、東京ドームに至るまでの「予選のほうが厳しい」「プレッシャーがかかる」と、関係者は口をそろえる。

 Honda熊本が九州第1代表、Hondaが南関東第1代表と、無傷で全国切符を手にした一方で、Honda鈴鹿は東海地区二次予選で苦しんだ。

 初戦から3試合を勝ち上がり、第1代表決定戦へ進出したものの、トヨタ自動車に逆転負け。また、第2代表(対王子)、第4代表(対西濃運輸)、第5代表(対JR東海)と「王手」をかけてから、まさかの4連敗を喫した。

 代表枠はあと1つ。鈴鹿は窮地に追い込まれた状況下で、熊本からの「友情」に救われた。Honda熊本で今季から主将の川嶋克弥(明大)が、こちらもHonda鈴鹿で2018年からキャプテンの中村毅(亜大)へ、これ以上ない激励メッセージを送ったのである。

「ここが、踏ん張りどころや!! こういうときこそ、リーダーが元気を出していけ!!」

 2人は2015年のアジア選手権で社会人日本代表として、日の丸を背負い戦った仲。選考合宿で同部屋となり、意気投合して以降、1歳上の川嶋は中村を弟のようにかわいがっている。

 当時のチームには長年、社会人ジャパンを引っ張ってきたHonda・多幡雄一(立大、2016年限りで引退)がいた。それまで7度の代表入りを果たし、主将も3度務めた大ベテランだ。川嶋は言う。

「同じHondaということもあり、多幡さんにはいつも気にかけていただき、野球の奥深さを教わった。プレー以外でも多くのきっかけを与えてくれた。今年3月のスポニチ大会でもお会いし、貴重なアドバイスをいただきました」

「多幡→川嶋→中村」へと継がれたHonda魂。東海地区最後の出場枠となった第6代表決定戦(対永和商事ウイング)で、Honda鈴鹿は崖っ縁で踏み止まり、東京ドーム出場を決めた。

 中村は決意を語る。

「Honda3兄弟と言われる。狭山(Hondaの所在地)と鈴鹿には負けられない。会社の士気高揚をテーマにしています。日本一になって鈴鹿市、従業員を喜ばせたいです」

 昨年は3チームそろって初戦突破を遂げただけに、今大会の期待も自然と高まる。Hondaの小手川喜常主将(立正大)は「勝ち上がって、Honda対決に勝って日本一になる」と鼻息が荒い。

 3月のJABA東京スポニチ大会ではHondaがHonda熊本を下して5年ぶりの優勝を遂げている。Hondaは過去に2度(1996、2009年)都市対抗を制しており、Honda鈴鹿は1994年以来、Honda熊本は過去に準優勝が最高成績で、悲願の初優勝を目指している。

 会社創立70周年。Honda勢としては準決勝でHonda熊本とHondaが再び顔を合わせ、この勝者が決勝でHonda鈴鹿と黒獅子旗をかけて戦うのが、最高のシナリオである。

文=岡本朋祐 写真=上野弘明
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