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ホークス80年

野村ホークスが初の前後期制を制して、7年ぶりのリーグV/ホークス80年「栄光の歴史03」

 

1938年3月1日、南海野球株式会社が設立されたから80年が経過した。47年にチーム名が南海ホークスとなり大阪で黄金時代を築いたチームは現在、九州・福岡の地でダイエーを経て、ソフトバンクホークスとして栄華を誇っている。プロ野球史に燦然と輝くホークス。その栄光の歴史を週刊ベースボールONLINEで振り返っていこう。

前後期制を見据え投手力を強化


プレーオフを制して胴上げされる野村兼任監督


 1973年、パ・リーグは130試合のペナントレースを前後期に分けた2シーズン制を採用。前後期の優勝チームがプレーオフ(3勝先勝)を行いシーズンの優勝を決めるというものだった。初年度の前期は野村克也監督率いる南海ホークス、後期は阪急ブレーブスが優勝。プロ野球史上初のプレーオフでは南海が3勝2敗で阪急を破り、7年ぶり10度目のリーグ優勝を果たした。

 南海を優勝に導いた野村監督は、54年にテスト生として入団した。戦力として捕手が弱いところ、正捕手がベテランで数年先には引退するチームを探し、それが南海だったという。高卒1年目は9試合に出場したものの戦力外通告。しかしチームに捕手不足が露呈したため一転残留。2年目は一軍出場はなかったが、3年目の56年にレギュラー捕手の座を確保すると、57年には30本塁打でタイトルを獲得するまでに成長。61年から8年連続本塁打王、62年から6年連続打点王はいずれもリーグの連続記録。63年は当時の日本記録となる52本塁打をマーク。65年には戦後初となる三冠王も獲得し、球界きってのスター選手となった。そんな野村が捕手兼監督になったのは70年のことだ。

 戦後まもなくの46年から68年までは鶴岡一人監督の長期政権。69年、1950年代の中心選手だった飯田徳治が監督となったが、チームは低迷し、パ・リーグとなってから初の最下位という屈辱を味わった。そこで白羽の矢が立ったのが野村だった。野村は前年まで3年間プレーヤーとして在籍したドン・ブレイザーをヘッドコーチに迎え入れた。彼の野球理論は卓越したものがあり、「シンキング・ベースボール」を導入。のちにヤクルトの監督となったときに言われた「ID野球」の原型が作られるのである。

 70年=2位、71年=4位、72年=3位の成績で迎えた4年目。前後期制が導入され、65試合の短期決戦と踏んだ野村監督は投手力を強化した。69年にドラフト1位で入団した内野手の富田勝巨人に放出し、山内新一松原明夫の巨人では芽が出ていない若手を獲得。山内は5年間で14勝、松原は4年間で未勝利。この若手2人を捕手・野村は一流投手に仕立て上げた。特に山内は前期だけで14勝3敗と覚醒。シーズン20勝をマーク。松原もプロ初勝利から7勝を挙げた。開幕投手を務めた江本孟紀は前期9勝、西岡三四郎が前期6勝。優勝を争ったロッテオリオンズを振り切り見事に前期優勝を決め、プレーオフへの切符をつかんだ。

 しかし後期になると投手陣に疲れが出て低迷。野村監督は「死んだふりや」と言っていたが、優勝した阪急には0勝12敗1分け(前期8勝5敗)と1勝もせず、まさに死んだふりの戦いだった。

下馬評は阪急有利だったが……


阪急とのプレーオフ、最後は江本孟紀が締めた


 この当時のパ・リーグの実力No.1は阪急だった。67年に初優勝すると69年まで3連覇。71、72年も優勝しリーグの雄として君臨していて、初のプレーオフでも阪急有利の下馬評だった。

 大阪で行われた第1戦、阪急が福本豊の初回先頭打者本塁打、2回表に岡田幸喜の一発で2点を先制。南海は2回裏、藤原満、代打・相羽欣厚の連続タイムリーで3点を取り逆転。3回からストッパーの佐藤道郎が登板し4回2/3を無失点に抑え、4対2で先勝。第2戦は先発の山内らが打ち込まれ5回まで1対9。終盤に追い上げたものの、7対9で敗れ1勝1敗。舞台を西宮に移した第3戦。南海は初回、野村の2ランとジョーンズの一発で先制し、先発の江本が完投し6対3で王手。第4戦は先発の西岡が打ち込まれ1対13で2勝2敗のタイに持ち込まれた。

 優勝を決める大一番は、南海・山内、阪急・山田久志の両先発が好投。南海は代打を出した関係で7回から佐藤がリリーフ。8回までスコアレスで進んだが、南海は9回表二死からスミスの一発で先制。続く広瀬叔功も一発を放ち2対0。9回裏、阪急は二死から代打・当銀秀崇がライトに打ち込み1点差。ここで江本を登板させ、逃げ切り7年ぶりのリーグ優勝を決めた。

 日本シリーズは巨人と9度目の対戦となり、初戦はものにしたが、その後4連敗で敗れた。巨人V9最後の年だったが、南海にとっても最後の日本シリーズ出場となった。

<毎週金曜公開予定>

写真=BBM
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