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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

夏の大会――なぜ、強豪校が初戦敗退するのか?

 

今夏の甲子園は史上最多56校が出場するが、地方大会を勝ち上がるのは厳しい戦いの連続である


 なぜ、強豪校が初戦敗退するのか?

 今夏は波乱の様相である。甲子園出場をかけた高校野球の地方大会が全国56地区で開催。2018年は実績のある「強豪校」の初戦敗退が非常に目立った。

 大きく分けて、理由は3つある。

 野球の勝負に「絶対」はない。強いチームが勝つのではなく、勝ったチームが強いのだ。夏に限らず、大会の「入り」は難しい、と言われる。2回戦以降から登場するシード校の場合、初戦を勝ち上がってきたチームと顔を合わせる。いくら、力があっても「負ければ終わりの夏」の初戦は硬くなる。勢いで挑んでくる相手校に対して、受け身を取るようだと、敵の思うツボとなる。

 2つ目はコンディションの調整の難しさ。甲子園でキャリア十分の元名将に聞けば、ここ数年の猛暑は「半端ない!!」と真剣な表情で語る。緊迫感のある初戦が暑さに見舞われてしまい、本来の実力を出し切れないケースもある。

 最後に監督采配。高校野球は指揮官の判断一つが、チームの浮沈を左右する。心身とも成長段階にある選手たちも、人生経験豊富な指導者に依存するケースが多く見られる。教育現場でもあり、それは当然の姿かもしれない。大会前の下馬評がいくら高くても、スキを見せてはいけない。ただ、手綱を締めてばかりだと、重圧ばかりがかかってしまうので、そのあたりのオンオフの切り替えも重要だ。大会本番までの過ごし方、モチベーションの保ち方で、チームの命運は大きく左右する。

 そこで、試合においてジャッジを見誤ってはいけないのは投手起用。よほどの調整不足でない限りは、初戦はエースで臨むのが鉄則だと思う。大黒柱が試合を作ることで、チームにリズムが生まれ、士気は高まり、緊張感もほぐれていくと思うからだ。攻撃面も、序盤から目の前の1点を貪欲に取りにいく。「いつでもいける」という安易な考え方が、大きな落とし穴となる。

 グラウンドで戦うのは同じ高校生。今夏も筋書きのないドラマが、全国各地で繰り広げられている。勝者の一方で必ず、敗者が存在する。この夏を無敗で終わるのは、全国でわずか1校。負けて得るものも、たくさんある。

 相手がいなければ試合は成立しないわけで、対戦校へのリスペクトを忘れず、力の限り2018年夏を完全燃焼する。それが、その後の人生の力、財産となるのだ。

文=岡本朋祐 写真=牛島寿人
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