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田村龍弘、12球団唯一の全試合出場を続ける若き正捕手の現在地

 

田村は捕手として着実にスケールアップを果たしている


 発売されたばかりの「ボル神ガー」タオルがZOZOマリンのスタンドで揺れる中、ロッテボルシンガーが11連勝を飾り、さらに“神”の領域へ近づいた7月21日のオリックス戦。もう1人、確かな手応えをつかんでいた男がいた。ボルシンガーとともにお立ち台へ上がった女房役の田村龍弘だ。

「ベストの試合ですね、やっぱり。ピッチャーが抑えることができて、自分が打って勝つ。最高のゲームです」

 捕手としても打者としても、田村の存在感が際立った。まずはリードだ。8回1失点の快投を見せたボルシンガーの「素晴らしいリードをしてくれるし、感謝し切れないくらい、僕のいいところを引き出してくれる。田村がいなければ僕はここに立っていない」という言葉がすべてだろう。

 田村自身も手応えを口にする。「自覚を持って、責任感を持ってリード、配球していくことを心掛けている。しっかり自分で考えて、いろいろな人にアドバイスをもらって、いろいろ勉強して。今年はそれが試合で実践できている。失敗することも多いですけど、充実しています」。

 打っては0対1の7回、一死二、三塁から決勝の逆転2点適時打。得点圏打率が3割に迫る勝負強さを見せつけた。「(打撃の)感じは悪くない。打率もニヒャクゴジュウ(.250)前後でずっと行けているので、(攻撃陣の)足は引っ張っていないかな。別に4打数4安打を求められているわけではないと思うので、小技とか、チャンスでのしぶといバッティング。そういうことをしっかりやっていきたい」。

 捕手2人体制を敷くチームが増え、“正捕手”の称号に希少価値が生まれつつある現代にあって、今季は全87試合に出場、先発を譲ったのはわずかに1度だけ。体力的にも過酷なポジションで、ほかに70試合以上で先発マスクをかぶっているのは12球団を見渡しても楽天嶋基宏(75試合)とヤクルト中村悠平(76試合)だけであることを思えば、今季の田村がいかに際立った存在であるかが分かるだろう。

「体の疲れを感じることはあります。でも『楽しい』と言ったらおかしいですけど、まだまだ上に行くチャンスがある場所(順位)で戦えているので、すごく緊張感を持ってやれています」

 言葉の端々に充実感がにじむが、「まだまだ未熟なところもありますけど、昨年に比べれば良くなっている。しっかり継続してやれればいいかなと思っています」と謙虚な姿勢は崩さない。一方でその言葉は、「明確な弱点はなくなり、全体的なレベルアップを図る段階に入った」と受け取ることもできる。もちろん、さらなる成長を誓う田村自身が首肯することはないだろうが。

 レギュラーの座を獲得して4年目の覚醒。それでも若き捕手はまだ24歳。経験がモノを言うポジションにあって、もちろん同世代の中でその経験値は群を抜く。カモメの正捕手から未来の球界ナンバーワン捕手へ。その称号を狙う権利は確実に手にしている。

文=杉浦多夢 写真=BBM
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