今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 ONでありNOであり
今回は『1963年7月8日増大号』。定価は10円上がって50円だ。
2004年だから、もう14年ほど前になるが、
長嶋茂雄氏にインタビューしたとき「NO、あるいはONと呼ばれまして」と聞いたことがある。
おそらく三番・長嶋、四番・
王貞治も多かったはずだが、「ノー」と読める響きが嫌がられ「ON」になったのだろうと勝手に思っていたが、確かに、この号では『笑顔で打ちまくるNO砲』と見出しがあった。
6月22日からは甲子園で、9連勝で首位をひた走る巨人と、最下位から6連勝で3位まで上がった
阪神が激突。逆襲を期待する阪神ファンが詰めかけ、外野席は上段の通路も立ち見客で埋まった。
しかし、その熱狂の中で阪神はまさかの3連敗。客席からは試合中も次々物が投げ込まれ、何度も中断。試合後はスタンドのあちこちでケンカが始まった。
セの最下位は大洋だったが、
三原脩監督の動きが危ない。
試合後、
中日新聞に電話をかけ、審判の巨人びいきをなじった。
「巨人に有利な判定を下す審判がいて公正な試合ができません。こういうことが続くなら巨人以外の11球団でペナントレースをすればいいんです」
もう言いたい放題。中日新聞は当然、翌日の一面にデカデカと載せた。
大洋の森球団代表は、
「あれは中日新聞の間違いです。監督があんなことをいうわけがありません」
と必死に打ち消したが、当の本人が、
「あれは全部正しい。ちゃんと私の言ったことが書いてあります」とニヤリ。
怖い人である。
実は親会社の大洋漁業もピンチにあったという。7月1日からロンドンで国際捕鯨委員会が開かれ、大幅な漁獲量削減も予想されていた。
記録では南海・
野村克也の200号本塁打、さらに国鉄・
金田正一の310勝が達成された。310勝は
別所毅彦(巨人ほか)と並ぶ日本タイ記録である。
国鉄と言えば、サンケイが実質的な経営者になったことで読売新聞が親会社の巨人とあちこちで衝突。イースタンでは、いまだ巨人─国鉄戦が行われていないという。
読売側に産経新聞の拡販につながるような試合に協力したくない、という思いがあったようだ。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM