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投手分業制の時代に今季12球団最多15完投のチームは?

 

8月5日、敵地・ナゴヤドームでの中日戦でうれしいプロ初完投を完封勝利で飾った巨人今村信貴


 今思えば巨人の高橋由伸監督は、苦しい台所事情にある現在のブルペンを予想していたのかもしれない。

 春季キャンプがスタートするよりもずっと前、新人合同自主トレなどの視察のために読売ジャイアンツ球場に姿を見せたときのことだ。今季の“勝利の方程式”について聞かれた高橋監督は、「もう1人、2人いれば理想だけど」としつつ前年セットアッパーとクローザーを担ったS.マシソン、A.カミネロの名前を挙げた。ただし、「先発はそこをあてにして投げているようじゃだめだと思う」とし、さらに「中継ぎは1年通して思いどおりにいかないこともある」と、先発投手陣に1人で投げ抜くこと(その意気込み)を求めている。

 その後、昨年は右肩痛などで登板なしに終わった澤村拓一の復活、3月には10年ぶりに上原浩治の巨人復帰が決まり、この2人が開幕からブルペンに加わったことで、序盤は継投策がまずまず機能していたのだが、次第にカミネロが不安定な投球を繰り返すようになり、上原も調整不足とコンディション不良を露呈。開幕時点は期待されていた4人ローテーションでの勝利の方程式が解体されると、2人は順に二軍へ。さらにカミネロの代わりにクローザーを任されたマシソンもヒザ痛で離脱するなど、現在は指揮官が頭を抱える事態に陥っている。

 それでも8月5日に今季100試合目を終え49勝50敗1分けの借金1で何とか2位にくいとどまっているのは、ディフェンス面ではここにきてようやくローテーションのメンバーが固まり始めた先発投手陣の奮闘によるところが大きい。チームの完投数15は12球団最多。セ・リーグに限っていえば、過去2シーズンは完投数が2ケタを超えたチームはゼロ(15年に巨人11、阪神10)で、今季2番目に多いのが中日の7(パ・リーグでは楽天の9)だから、その数は飛び抜けている。

 内訳は開幕からローテーションを守る山口俊が6(2完封)、菅野智之が5(3完封)と頼もしく、夏場を迎えてローテ入りした内海哲也が1(1完封)、今村信貴が1(1完封)、C.C.メルセデスが1、現在は二軍調整中の田口麗斗が1だ。しかも内海、メルセデス、今村の完投は、DeNAヤクルトとの6連戦があった前週(いずれもビジター)で、今村のプロ初完投初完封には高橋監督も「いい投球、いいテンポで投げ切ってくれた。さらに一歩、上に行ってくれたらいい」と喜びを口にしている。

 まだ先発完投が当たり前だった1990年、巨人は88勝42敗の勝率.671で2位・広島に22ゲーム差をつけて優勝しているが(藤田元司監督)、20勝をマークした斎藤雅樹(現投手総合コーチ)を筆頭に5人が2ケタ勝利。チーム完投数は70(先発5人で69をマーク)だ。さすがにこの数字は極端だが、残り43試合、9.5ゲーム差をつけられた広島を追い上げるには、指揮官が1月に予言しているように、先発陣の踏ん張りが不可欠な状況にある。

文=坂本 匠 写真=BBM
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