週刊ベースボールONLINE

2018甲子園

東北勢悲願の甲子園制覇へエース・吉田輝星の快投で金足農が好スタート!

 

「日の丸エース」へ名乗りを上げる


金足農・吉田は鹿児島実との1回戦で1失点完投し、23年ぶりの甲子園勝利を挙げた


 第100回記念大会は、試合前から華やかである。対戦する両校の都道府県の過去の甲子園名場面が流れ、最後に郷土ゆかりの現役プロ野球選手が球児へメッセージを送る。

 金足農(秋田)と鹿児島実(鹿児島)の1回戦。秋田の名シーンの一つは1984年夏、初出場で4強進出と躍進した金足農の準決勝(対PL学園)だった。画面には当時2年生の桑田真澄の姿もあった。試合前の調整中で見る余裕もなかったと思われるが、金足農の150キロ右腕エース・吉田輝星を後押ししているようだった。

「桑田二世」

 この四文字が躍るようになったのは、春先からであると記憶する。今夏は全5試合43イニングを一人で投げ抜き、11年ぶりの甲子園出場へと導いた。大会主催者が発行するガイドブックでも巻頭カラーを飾り、注目度は上がるばかり。しかし、浮かれる素振りはない。

「桑田さんの足元にも及びません。甲子園の映像を見ましたが、すごかった。少しでも近づけるように頑張りたい」

 金足農野球部OBの父・正樹さんの影響は大きい。

「投手出身でよく教わりました。プレーよりも気持ちの面。『周りはお前のことを褒めるかもしれないけど、俺は褒めない。上の人はいる。どん欲にレベルアップを目指せ』と。甲子園出場決めても? 褒められませんでした(苦笑)」

 高校進学の際は金足農以外の学校から勧誘を受けることもあったが、「父の母校でやろうと思った」と、幼少のころからの一途な思いがブレることはなかった。

 9月に宮崎で開催される「U-18アジア選手権」の侍ジャパンU-18代表の第一次候補30人に選出されているが、「まったく、そのことは考えていない。チームが勝つことが優先。自分だけのチームではないので。そうすれば結果がついてくる」と、鹿児島実との1回戦のマウンドに集中した。

 初回からキレのある真っすぐを披露。表示は「138キロ」でも、スタンドからは「おっ!!」とどよめきが起きた。好調時は「リリース時に『パチン』、そして扇風機みたいな『シー』という球が回転する音が聞こえる」と明かす。また「1バウンドするかと思ったら、指にかかってそのまま(ミットに)収まるボール」を、実践できたようだ。ピンチになればギアを上げ、この日は最速148キロを計測している。

 終盤まで球威は衰えることなく、14奪三振で1失点完投した。「桑田二世」と呼ばれるのもよく分かる。吉田の投球からは、昭和の匂いを感じるのだ。「2ストライクに追い込めば狙う」と語っていたウイニングショットは真っすぐ。変化球でかわすことのない真っ向勝負は、見ている者を熱くさせる。

 試合後、侍ジャパンU-18代表の永田裕治監督(前・報徳学園監督)が、金足農の関係者へ挨拶。あくまで憶測だが、代表入りへ向けて「前進」しただけでなく、「日の丸エース」に名乗りを上げても良いほど、申し分のない投球内容であった。

 金足農は県大会から通じて一人の交代もない「9人野球」。当然、吉田もマウンドを一度も譲っていない。8強に進出した1995年以来の甲子園白星、84年夏に4強入りした快進撃の再来が期待されるが、金足農ナインの最終目標は、そのさらに2つ上にある。学校創立90周年を、春夏を通じて東北勢悲願の甲子園制覇で飾ることだ。昭和の香りがする、さわやかな金足農から、2回戦以降も目が離せない。

文=岡本朋祐 写真=牛島寿人
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング