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2018甲子園

無四球完封!創志学園の2年生エース・西純矢がガッツポーズに込める責任感

 

「野球人生で一番、良いピッチングができました」


創志学園の2年生エース・西はマウンド上で闘志をむき出しにする


2018年8月9日
第100回=1回戦
創志学園(岡山)7−0創成館(長崎)

 ガッツポーズとは当事者、受け取る人によっても、さまざまな感情が生まれる。

 チームによっては相手校の思いを察知して、自粛させる指導方針もある。だが、素直に喜びを表現したい気持ちも十分、理解できる。

 創志学園の2年生エース・西純矢はマウンド上で、闘志をむき出しにするタイプだ。説明するまでもなく「パフォーマンス」ではない。

「意識的に出しているのではなく、自然に出ています。今日も気合が入って、そうなるかもしれない」

 創成館との1回戦を前に、意気込みを語った。

「ピンチの場面を抑えるとうれしいので、うれしさを爆発させるんです」

 気持ちを前面に出す重要性を再認識したのは、今夏の倉敷商との県大会準決勝だ。プロ注目の151キロ右腕・引地秀一郎に投げ勝ち決勝進出を決める、西にとって印象深い一戦となった。1学年上の引地から吸収したことがある。

「マウンド度胸。吠えるタイプのピッチャーで、倉敷商という伝統校を背負っている姿を、あの試合で学ばせてもらいました」

 ガッツポーズは2つの「責任感」ともリンクする。1年時に父が他界し、長男としての「責任感」を自覚し、2年春からは創志学園の背番号「1」を着ける「責任感」。さらに今夏、西日本豪雨で苦しむ被災地の人へ「元気と勇気を与える」と、新たな「責任感」が芽生えていた。

「ほかのピッチャーにはない責任感が、この1年間で成長してきたところだと思います」

 150キロ右腕は2年生ながら侍ジャパンU-18代表の第1次候補30人に選出されているが、創成館との1回戦で、その実力を発揮した。毎回の16奪三振で被安打4の無四球完封勝利(7対0)で、夏2回目の出場で初勝利へと導いている。

 この試合でも自身を鼓舞するガッツポーズを連発。「緊張するときに声を出して、緊張をほぐすんです」と、初回を無失点でしのぐと、落ち着きを取り戻し、ピンチでの三振奪取の際には「よし!!」とガッツポーズを見せた。

「野球人生で一番、良いピッチングができました。16奪三振? 今までで一番、多いと思います。数は気にしていないです」

 自己最速にあと1キロに迫る149キロを計測も、まったく関心がない。

「昨夏、秋まではスピードガンと勝負していましたが、ゲームメークできる投手、打たせて取る投手が勝てる投手になる。150キロは来年出たらいいです。自分の打たせて取る投球を心掛け、先輩たちと1試合でも多くしたい」

 最終回は創志学園が7点の大量リード。幕切れのガッツポーズは、右手をゆっくり上げるややおとなしめだった。

「空から自分のピッチングを見ていてくれたらうれしい」

 亡き父へ向けた、勝利の報告だった気がする。

文=岡本朋祐 写真=石井愛子
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