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2018甲子園

龍谷大平安・原田監督が涙で手にした甲子園春夏通算100勝

 

龍谷大平安は鳥取城北との1回戦で勝利し、春夏通算100勝を達成。原田監督はウイニングボールを手にした


 これまでインタビュー中に涙を流した高校野球の監督は、ただ一人。龍谷大平安・原田英彦監督である。なぜ、感極まったのか? 2008年4月「平安高校」から「龍谷大平安高校」となった経緯を聞いた。すると、伝統の校名が変わってしまった寂しさを思い出し、自然と目頭が熱くなった。

 母校愛。幼少の頃、マジックで「HEIAN」と書き、自前のユニフォームを作成したほど、平安高校野球部の「ファン」を自認する。

 第100回記念大会を控え、決意を新たにした。

「この夏、壊れるからな」

 中京大中京の131勝に次ぐ史上2校目の甲子園通算100勝に王手。この夏に、すべてをかけていた。陣頭指揮。原田監督はなぜ、この言葉を使ったのか――。

「リーダーがいないチームだったので、キャプテンになろう、と。自分がキャプテンになって引っ張ってやる。誰よりも声を出す。選手と同じ気持ちでやってきました」

 本来の主将は松田憲之朗だが、指揮官は「優しい子」と、伝統校を背負うには物足りなさを感じていた。しかし、夏の京都大会開会式で選手宣誓を務め上げたのを機に、人が変わったという。そして、8月2日の甲子園抽選会では選手宣誓に立候補。隣にいた近江の主将が引き当てたが、仮に松田がその横を取っていれば、大役が回ってくるところだった。

 この行動に、原田監督は「やっばー……(苦笑)。甲子園で宣誓することがいかに大変なことか分かっていない。(開会式は3日後と)日がないですから……」と想定外だったそうが「そういう子じゃなかったのに……」と、前向きな姿勢を見せてくれたことが何よりもうれしかった。

 鳥取城北との1回戦を控えた試合前取材で甲子園100勝への意気込みを問われると「頑張ります!! ではなくて、絶対、せなイカンですよ。絶対、絶対!!」と目の鋭さが増した。さらに、こう付け加えた。

「100回大会に出場した、だけではダメ!! 達成せかイカンです。1人、2人でも沈む子がいないように、皆でガチャガチャ、ワイワイできたらいい。終わるまでします」と、今夏は“原田主将”を全うすることを宣言した。

 原田監督はプレーボールから144分間、森村俊輔部長、ベンチ入り18人の選手、記録員とともに戦った。ついに、そのときがきた。2点リードの8回に追いつかれたが、9回裏にサヨナラ勝ち(3対2)。

 すぐに涙腺がゆるむ指揮官。サヨナラを見届けて涙を流すと、試合後の立ち台でも3回、言葉を詰まらせている。まずは冒頭。「本当に勝ちたかった。勝ちたかった……」。そして8回途中まで投げたエース・小寺智也について「この舞台で……そんなに気持ちが強い子ではないんですが……。成長がうれしい」。さらに、4月に他界した平安の先輩・衣笠祥雄氏(元広島)についての質問が飛ぶと「帰って、報告しに行きます。たぶん『良かったな』と笑っているでしょう」と、もう我慢できない。

「(3勝を挙げて4強に進出した)2年前のセンバツでは100勝を意識はしていなかったんですが、99で残ってしまったので……。この2年間が……。100回が待ってくれていたんだな、と受け止めています」

「HEIAN」のユニフォームは毎試合、アイロンをかけて臨むほど、愛着がある。

「誇りと責任、使命。ずっとそう思っています。先輩方が積み重ねてきた数字に続いていかないといけない。すっと、平安は終わらない。京都では強くないとイカンのです」

 2回戦進出を決め、まだ、大会は続くが……。

「これに集中してきたので、あまり次のことは考えたくない」

 自ら“兼任主将”として「壊れる」まで選手たちを鼓舞した原田監督。今日1日だけは、100勝の余韻に浸るつもりだ。

文=岡本朋祐 写真=宮原和也

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