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2018甲子園

2回戦も大勝!大阪桐蔭の強さを支える記録員

 

中学時代は最速144キロを誇る右腕


中学時代に144キロを投げて注目を集めた小谷。大阪桐蔭では故障もあり、記録員としてチームの勝利のために献身的に動いている(小谷の背後にいるのは根尾、右は有友部長)


2018年8月13日
第100回=2回戦
大阪桐蔭(北大阪)10―4沖学園(南福岡)

 いわゆる「休み肩」である。「(メンバーを)外れてから、調子が良いんですよ」と語るのは大阪桐蔭の記録員・小谷優宇である。

 中学時代に在籍したヤング姫路アイアンズでは最速144キロを誇る右腕で、全国大会優勝。原則、ボーイズの選抜チームである「NOMOジャパン」で、ヤングリーグから入れるのはごくわずか。その「枠」に入ったのであるから、相当の逸材であったのだ。

 大阪桐蔭の投打と遊撃手の「三刀流」で注目される根尾昂(飛騨高山ボーイズ)とは、当時のチームメートでアメリカへ遠征している。高校2年秋から今年3月までは同部屋だった。

「夜も部屋にいないと思えば、雨天練習場でずっと打撃練習をしています。部屋に戻れば体幹トレーニング。体を鍛えた後は、動画で投球フォームを確認したり、野球に関する本を読んでいます。努力家で、研究熱心です」

 小谷もベンチ入りを目指して日夜、白球と向き合っていたが、2年夏に右ヒジを故障。12月まで投げることができず、センバツ前に、西谷浩一監督から記録員に指名された。石田寿也コーチとともに相手校のデータ収集に奔走し、史上3校目の春連覇に貢献したのだ。

 最後の夏も背番号を目指し、厳しいチーム内競争を展開。春の府大会では背番号17でベンチ入り。登美丘との4回戦で公式戦が初登板を果たし、1イニングを無失点に抑えている。

 全国屈指の精鋭が集まる大阪桐蔭において、ベンチ入りの壁は高かった。小谷は今夏も、記録員としてチームに貢献する決意を固めた。

「新たに加わった1年生を含め、63人で勝つことを目指してやってきた。自分の立場で、できることをサポートしていきたい」

 視察とビデオで相手校を分析し、B5用紙に徹底事項を手書きでまとめる。石田コーチに最終確認をしてもらい、コピーしてミーティングで配布する。沖学園との2回戦は10対4で快勝。ドラフト1位候補の根尾がバックスクリーンへ、藤原恭大は逆方向(左翼)へ特大の一発と、データが生かされた。小谷の努力が「勝利」という形で結実したのだ。

 史上初、同一校2度目の春夏連覇へ一歩前進した大阪桐蔭。「3回戦以降は日程も詰まってくるため、センバツでの経験上、夜1時過ぎまで作業にするかもしれませんが、チームのために頑張ります」。大会終盤こそ、小谷の腕の見せどころである。

 裏方に徹し、一歩、引いた目で野球を見ることにより、視野が広がったという。

「投手としてボールの使い方とか、打者の待ち球の見極めなど、今後、マウンドに上がる上では役立っています」

 大阪桐蔭ではユニフォームを着られなかったが、卒業後は地元・関西の大学で野球を続ける。「休み肩」の現在、コンディションは万全だと言い、甲子園が終われば、次なるステージへの準備を進めていく。サポートする側ではなく、今度こそは「主役」を目指して――。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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