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2018甲子園

大阪桐蔭ナインが見せた「王者の振る舞い」

 

スポーツ本来のあるべき姿


沖学園・森島は安打を放ち、一塁到達後に左足がつった。その姿を見た大阪桐蔭の控え選手が、すぐさま応急処置へ向かっている


2018年8月13日
第100回=2回戦
大阪桐蔭(北大阪)10−4沖学園(南福岡)

 大阪桐蔭の部訓は「一球同心」である。プレー中はもちろんのことだが、学校・生活面などの野球以外、全部員が一つことに集中するという意味が込められている。

 甲子園のスタンドは高校球児の「一挙手一等足」を見逃さない。「拍手」にはいろいろな種類がある。好プレーを喝采、劣勢チームを後押し、負傷した選手がグラウンドへ戻った際の激励……。今回はそれとはまた異なる、心温まる拍手であった。

 沖学園・森島渉は6点を追う9回表、中前打で出塁した。ところが、一塁到達直後に左足ふくらはぎがつった。近くだった一塁側・大阪桐蔭の俵藤夏冴(背番号14、3年)は氷のう、青木大地(同15、3年)は飲料水を持って、すぐさまベンチから飛び出した。

 相手校からの心温まる応急処置だったが、森島はプレー続行が不可能となり、無念の退場となった。チームはそのまま4対10で敗れたものの、森島の心は晴れやかだったという。

「相手チームからだったので、うれしかった。高校野球をやっていて良かった」

 沖学園の主将・阿部剛大も「大阪桐蔭と対戦でき、自分たちの高校野球の終わりとしては、うれしさのほうが大きい」とすっきりした表情で語ったのが象徴であった。

 俵藤、青木ともベンチからの指示ではなく、自発的だったというがいま、スポーツ界で叫ばれている「フェアプレーの精神」を行動に移したことになる。

 今年6月、サッカーW杯でもポルトガル代表のFWクリスティアーノ・ロナウドが、相手FWが負傷退場する際に肩を貸した。この感動シーンには、世界から称賛された。

 日本学生野球憲章の冒頭部分、第1章総則の「第2条(学生野球の基本原理)」にはこう書いてある。

「学生野球は、友情、連帯、そしてフェアプレーの精神を理念とする」

 大阪桐蔭は今春、センバツで史上3校目の連覇。今夏の甲子園では、史上初、同一校2度目の春夏連覇の偉業がかかっている。沖学園との2回戦を突破し、頂点まであと4勝。

 強いだけではない。たとえ、勝ち負けを争う敵チームであっても、相手を思いやり、リスペクトする。

 彼らが見せた「王者の振る舞い」はスポーツ本来のあるべき姿を教えてくれた気がする。

文=岡本朋祐 写真=高原由佳
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