週刊ベースボールONLINE

ベースボールゼミナール

走者二塁で三遊間のゴロのとき、スタートを早くする方法は?/元巨人・鈴木尚広に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は走塁編。回答者は“足”のスペシャリスト、元巨人鈴木尚広氏だ。

Q.無死または一死で、走者二塁のとき、三遊間にゴロが飛んだケースについての質問です。二塁走者は打球が抜けたのを確認してからスタートするのが基本だと思いますが、このときのリードの位置取りや、スタートを少しでも早くするための動き方を教えてください。また、どうしても1点が欲しいケースで、抜けるものと判断してスタートをしてしまう作戦もあるのでしょうか。(千葉県・19歳)



A.ショートがどこにいるのか目で確認し、頭の後ろの目で気配を察知することです。


巨人現役時代の鈴木尚広氏


 走塁の中でも判断が難しいケースです。ランナーの後方ではなく、これから自分が向かおうとする打球に対して、見えてしまう分、動きを止めてしまいがちです。なぜなら、サードの動きは目で確認できるものの、ショートは死角にいることがほとんどで、その動きが見えないからです。これが三遊間に飛んで、明らかに抜けるであろう打球だったとしても、「ショートに捕られるかもしれない」という不安が、一歩目を鈍らせるわけです。ではどうすればいいか。

 ショートをずっと観察し続けることはできませんが、リードを取った段階、そしてモーションを起こした直後に、ショートがどこにいるのか、前者では実際に目で確認して、後者では気配を察知しておくことでしょう。私の持論ですが、良いランナーには頭の後ろにも目があります。つまり、実際の目ではピッチャーの動きを見ていますが、野手がどこにいるのか、後頭部で感じ取れるということです。神経を集中させ、訓練を積み重ねれば、気配や、砂を踏む音で位置を知ることができるようになると思います。

 場合によってはコーチャーとの連携でショートの位置を知ることも1つの手段だと思います。そのときのポジショニングから、三遊間の打球が抜けるのか、追いつかれるのかを推測します。二塁ベースに寄っていればより抜ける確率は高まりますし、三遊間を詰めているのならば打球の質によってはあるいは、ストップ、もしくは確実に抜けてからスタートを切る、という判断につながるでしょう。このようなところに神経を傾けていれば、より良いジャッジの中で、素早くスタートを切ることにつながると思いますよ。

 難しいのは緩いゴロでしょうか。抜けるか抜けないかのギリギリの打球です。ただ、サードも追いかけ、ショートも追うような打球では、三塁は確実に落とせます。捕られそうだからストップではなく、状況をよく確認して、1つでも先の塁に、という意識が大切だと思います。

 ちなみに、「抜けるものと判断して……」は、“判断”ではないですよね。判断とはそこに確信がなければ、ただの暴走です。ベンチからギャンブルでスタートしていい許可が出ていれば話は別ですが、せっかくの得点機、確実にホームにかえるための材料を探すべきでしょう。

写真=BBM

●鈴木尚広(すずき・たかひろ)
1978年4月27日生まれ。福島県出身。相馬高から97年ドラフト4位で巨人入団。走塁のスペシャリストで、代走での通算盗塁数132は日本記録である。16年現役引退。現役生活20年の通算成績は1130試合出場、打率.265、10本塁打、75打点、228盗塁。
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング