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2018甲子園

最後まで後輩エース・西純矢を思いやった創志学園の正捕手

 

経験豊富な司令塔


創志学園の捕手・藤原(右)は最速150キロの2年生エース・西を引っ張った


2018年8月15日
第100回=2回戦
下関国際(山口)5−4創志学園(岡山)

 創志学園の正捕手・藤原駿也は今夏が1年夏、2年春に続く自身3度目の甲子園。2学年上の高田萌生(現巨人)、1学年上の難波侑平(現日本ハム)とバッテリーを組んだ経験豊富な司令塔である。

 そして今夏は1学年後輩の西純矢とコンビを組み、2年ぶり2回目の甲子園出場を遂げた。

 2年生・西はすでに150キロの大台を突破している。

「高田さんにはボールの強さがあった。西はボールのキレが違う。人とは違います」

 2人は相性抜群である。

「三振が欲しい場面で、三振が取れる。西はスイッチを入れるケースも分かっている。気持ちが合います」。今夏を迎えた段階では、抜群のストレートを投じる一方で「変化球でストライクが取れない」という課題があった。

 転機となったのは、倉敷商との準決勝だという。相手エースはプロ注目の引地秀一郎で、自然とボルテージが上がった。この大一番で、西は完封(2対0)で覚醒した。

「球質が変わった。変化球(スライダー、チェンジアップ、フォーク)も低めに決まるようになった」。県大会でつかんだ感覚を甲子園でもキープ。創成館との1回戦を無四球完封で、16奪三振と「人生最高」の投球で初戦突破に貢献した。

 西と言えば、ピンチを切り抜けたり、自身を鼓舞する際にガッツポーズを見せる。ボールを受ける藤原の立場としては「気持ちでくるから、リードしやすい。攻撃につなげて、打ってやろう!! 気持ちになる」と、チームとしての相乗効果を語る。

 だが、一転して下関国際との2回戦は勝手が違った。藤原は試合後「組み立てに苦労しました」と、振り返った。

「1回戦は振ってくるチームで、球数を抑えられた(123球)が、今日はしっかり見てくるチーム。1巡目から球数を投げさせていこう、という姿勢が感じられた」

 審判員の判定は絶対である。しかし、2年生は若さが出てしまった。

「ストライクかな? と思ったらボールになった場面があり、ちょっと、イライラしていた。『笑顔で行こう』と言ったんですが、なかなか立ち直らなかった……」

 8回までは、何とか踏ん張った。相手打線を1安打に抑え、2点リードで9回を迎えた。しかし、最後のアウト3つが遠い。先頭打者にボール2つが続いたところで、異変に気づいた藤原はすぐさまマウンドへ行ったが、すでに球数は170球に近づき、修正させるのは難しかったという。

 四球、死球、安打で無死満塁。打者のスクイズを察知した西はウエストしたが、「自分が準備していなかったということだと思います」(藤原)と、捕球できず(記録は暴投)に1点差とされると、適時打と犠飛で計3失点と勝ち越されている。

「日本一のピッチャーになってもらいたい」


 1点を追う9回裏、創志学園は一死から安打が出る。次打者・西は犠打で走者を二塁へ進めている。すでに、アウトのコールがされていたのにも関わらず、2年生エースは一塁へ頭から突っ込んだ。投手ではまず、あり得ないヘッドスライディングである。藤原は言う。

「取られてしまい、取り返してやろうという気持ちがプレーに出たのだと思います。過去に? ないです」

 二死二塁と見せ場を作った創志学園だったが、後続が抑えられた。

「西には来年もある。ずっと日本一を目標にやってきた。日本一のピッチャーになってもらいたいです」(藤原)

 先輩は最後まで後輩を思いやった。西は先輩・藤原へ、感謝の言葉を並べている。

「一番、信頼していた先輩。日本一のバッテリーになりたかったが、自分のせいで、こんな形になってしまった。甲子園では良い思いもして、怖い思いもした。来年、戻ってきて、今年の借りを返したいと思います」

 新チームからは西が、創志学園を引っ張る立場になる。「好投手」から「勝てる投手」への挑戦が始まる。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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