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ベースボールゼミナール

盗塁のスタートを切る勇気を持たせるには?/元巨人・鈴木尚広に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は走塁編。回答者は“足”のスペシャリスト、元巨人鈴木尚広氏だ。

Q.中学校の部活動の顧問で野球を教えています。足が速い生徒がいるのですが、走る勇気が出ないらしく、スタートを切ることができません。どのような過程を踏んで自信をつけていくのが良いと思いますか。教えてください。(埼玉県)



A.まずは失敗することに慣れさせること。失敗の連続の中から勇気は湧いていくる。


イラスト=横山英史


 非常に難しい質問ですね。そもそも走塁や盗塁は、普段の練習の中である程度のところまでは技術を上げることはできますが、やはり、試合で通用する技術を身につけるには試合の中でしか経験値を積み上げることはできません。また、“走る勇気”にしても、はじめから持っているものではなくて、失敗を繰り返すことによって確信を得て、ようやく湧き出てくるものではないでしょうか。

 中には盗塁をとても簡単なものだと考えている方も大勢います。質問を送ってくれた先生も違いますか? 「足が速い生徒がいる」とのことですが、足が速いから盗塁が成功するわけではありません。問の文面からは足が速い選手に、すぐに盗塁の成功を期待しているようにも受け取れます。

 そうではなくて、先生には失敗がその後の成功への糧であることをまず理解しておいてほしいですね。その上で、まず選手に失敗することに慣れさせること大事だと思います。失敗に対して「何か感じたことはあるか?」と問いかけて、「では、次はそこで感じたことを試してみよう」といって、再びグラウンドに送り出してあげてください。

 100パーセントが求められるプロとは違いますし、ましてやまだ中学生です。特に練習試合などではどんどん失敗してもらいましょう。質問に出てくる選手は、きっと、失敗を恐れています。どんなに遅れたスタートでも、一歩踏み出したことで次のスタートへの自信につながると思いますし、まずは「失敗してこい」くらいがいいのではないでしょうか。スタートを切ることができたら、まずそのことを褒めてあげてください。

 私だって失敗の連続でした。それこそプロに入りたて、一軍に出たては失敗のほうが圧倒的に多いです。ただ、なぜ失敗したのか、しっかりと学ぶようにしていました。ピッチャーだって打たれて成長につなげますし、バッターだって打ち取られて次の打席にその失敗を生かします。盗塁だって同じですよね。いきなり成功できるほどあまくはありません。むしろ、失敗の数ほど引き出しが増える。指導者の方にはぜひ、そのことを頭に入れてもらって、どんどん走らせて、失敗させて、学ばせてあげてください。

●鈴木尚広(すずき・たかひろ)
1978年4月27日生まれ。福島県出身。相馬高から97年ドラフト4位で巨人入団。走塁のスペシャリストで、代走での通算盗塁数132は日本記録である。16年現役引退。現役生活20年の通算成績は1130試合出場、打率.265、10本塁打、75打点、228盗塁。
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