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2018甲子園

甲子園でドラフト「高校生No.1」の座を手にした大阪桐蔭・根尾昂

 

宿舎で黙々と一人で素振り


投打と遊撃手で躍動する大阪桐蔭・根尾。NPBスカウトの評価は「今大会のNo.1選手」で一致している


 夏の甲子園も大詰めだ。8月17日には8強が出そろい、明日18日は「大会で最も面白い」とされる準々決勝である。なぜなら、この8校から必ず、第100回記念大会のチャンピオンが生まれるからだ。大阪桐蔭は2012年以来、史上初、同一校2度目の春夏連覇まで「マジック3」としている。

 ドラフトに話題を向けても、大阪桐蔭が戦前の予想どおり「主役」の様相だ。投打に遊撃手の三刀流である根尾昂、スピード&パワーを兼ね備える藤原恭大がすでに、1位指名が有力と言われる。プロ関係者によれば、展開によって12球団の1位同時入札で、重複する可能性もあるという。ここにきて、評価を高めているのが柿木蓮で、2回戦では自己最速151キロと、目標の全国制覇へ調子を上げている。

 中でも根尾昂が今大会を通じて「高校生No.1」の立場を手にした。複数のスカウトに聞いても「好投手は毎年、出てくるが、攻守走のスピード、すべてを兼ね備えた選手は数年に一度しか出て来ない」と語る。

 毎年、ドラフト補強はどの球団も投手が最優先となる。だが根尾の場合、投手としての可能性も秘めており、評価はさらに上がってくる。高校生であり「即戦力」とはいかないまでも、長いスパンを考えれば、10年以上、球団の顔として活躍してくれる期待感が持てる。高卒野手の例を挙げれば巨人坂本勇人ヤクルト山田哲人のような立場である。

 なぜ、根尾がそこまで評価されるのか。あるベテランスカウトが、ふだんは報道陣には決して見せない「素顔」を明かしてくれた。

「たまたまホテルが一緒だったんですが、夜、地下に用事があったので行ってみると、根尾が黙々とバットを振っていました。しかも、フルスイング。プロ野球でも、複数で群れて練習する選手がいますが、成果が上がるとは言えません。一人だからこそ、力になる」

 中学時代に在籍した飛騨高山ボーイズから「スーパー中学生」として騒がれ、大阪桐蔭でも早くから脚光を浴びてきた。天才肌に見えるが、実は努力家。前出のスカウトは「注目されている中でも必ず、結果を残す。相当な精神力。われわれは、そのあたりも見ています」と付け加えた。

 根尾の顔から、疲れた表情を見たことがない。いつもハツラツとしており、キビキビとプレー。感情の起伏がないから、どんなにプレッシャーがかかった場面でも冷静にいられる。

 頂点まであと3勝。根尾の涙も、見たことがない。仮に史上初の悲願を達成しても、普段どおり、淡々と試合を振り返る根尾がいそうな気がする。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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