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松坂大輔は20年前と変わらない?

 

8月16日、ナゴヤドームでのDeNA戦で大量援護にも恵まれて今季5勝目を挙げた中日松坂大輔


 100回目の夏の高校野球が行なわれている真っただ中、8月16日のDeNA戦(ナゴヤドーム)で、20年前の甲子園を沸かせた松坂大輔が、レッドソックス時代の2010年に9勝をマークして以来、8年ぶりの5勝目を挙げた。

 DeNA・ラミレス監督の“奇策”で相手先発に後輩に当たる横浜高出身者が4人名を連ねたが、むしろこれを手玉に取り、6回5安打3失点と試合を作る。最速は初回、その横浜高の後輩で四番の筒香嘉智を三振に斬って取った138キロと、往年のスピードは望めないが、この日はカットボール45%、スライダー13%、カーブ10%、フォーシーム10%、ツーシーム8%(データ提供=共同通信デジタル)など、いわゆる“きれいな真っすぐ”をほとんど投じず、ボールを動かしてDeNA打線を翻ろう。筒香も「腕の振りが全部一緒で、球の出どころも見えづらかった」と脱帽だった。

 150キロを超える剛球に、鋭く大きく変化するスライダーを武器に数々の名勝負を演じて甲子園の頂点に立ち、プロ入り後も新人年から3年連続の最多勝、レッドソックス移籍後も2年で33勝を挙げた力強い姿はそこにはない。2015年にソフトバンク移籍で日本球界復帰後は、相次ぐ故障で一軍では1試合のみの登板。ケガも癒えた今季が実質的な松坂の日本復帰イヤーとなるが、その変貌ぶりに驚いたファンも多いはずだ。力投派から技巧派へのモデルチェンジ。しかし、松坂本人はこれを否定する。

「よく聞かれるんですけど、自分を知って、いま何をできるか、ということを選択して投げているだけで、力投派から技巧派に変わったとか、そういう意識は僕にはないです。それは高校時代も、西武でも、アメリカにいたときもそう。150キロを超える真っすぐを投げたいとか、鋭く変化するスライダーを投げたいという思いももちろんありますよ。ありますけど試合に出そうとはしないですね。もしかしたら戻れるかもしれないな、なんて思いながらトレーニングはしていますけど(笑)。でも、いま、試合中に思うことはないです」

 横浜高時代、当時の渡辺元智監督に「この子はプロに行くだろうから、その時に困らないように」と徹底的に鍛え上げられたけん制やフィールディングなどとともに、あのころから柔軟な発想と対応が、実は怪物・松坂の武器の1つだった。5勝目を挙げた8月16日のDeNA戦でも、2回からワインドアップをやめ、セットポジションで投げ込んだのは、「状態が良くなかったからです。(セットのほうが)バランスが良さそうだったから」と、この修正能力だ。

 開幕以来、ローテーションの間隔はあまりに長いが、それでもここまで4連勝で、勝ち頭のガルシアに次ぎ、小笠原慎之介と並ぶチーム2位の勝利数だ。変わらない怪物は、果たしてどこまで勝ち星を伸ばせるだろうか。

文=坂本 匠 写真=BBM
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