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夏の甲子園 名勝負列伝

佐賀県勢に決勝戦満塁弾の奇跡再び/夏の甲子園 名勝負列伝

 

いよいよ100回目の夏の甲子園が始まった。『週刊ベースボール』では、オンライン用に戦後の夏の甲子園大会に限定し、歴代の名勝負を紹介していきたい。

吹き荒れた「がばい旋風」


8回裏、逆転満塁弾を放った副島浩史


2007年8月22日
第89回大会=決勝
佐賀北(佐賀)5−4広陵(広島

 高校野球界が特待生問題に揺れた2007年の夏。この年の大会を制したのは公立校の佐賀北だった。佐賀北は開幕試合で福井商(福井)を破って甲子園初勝利を挙げると、宇治山田商(三重)とは延長15回引き分け再試合の激闘。これを制し、3回戦も逆転勝ち、準々決勝では延長13回で帝京(東東京)も倒す。準決勝でも長崎日大(長崎)に競り勝ち、とミラクルな戦いぶりで勝ち上がり、“がばい旋風”などと称された。

 決勝の相手は、この年センバツ8強の広陵。1回戦で、3年連続決勝戦に進出していた駒大苫小牧(南北海道)に逆転勝ちしている。エース・野村祐輔(現広島)ら選手の層は厚く、下馬評では広陵有利だった。

 そしてゲームは、その下馬評どおりの展開で進んでいった。広陵は2回に2点を先行、佐賀北先発の馬場将史をKOし、2人目の久保貴大を引きずり出す。7回には野村の二塁打で2点と、完全に広陵ペースだ。

 しかし、8回裏、突如流れが変わる。7回まで1安打に抑えられていた佐賀北は一死後、連打で一、二塁。すると、球場のムードは判官びいきとでも言うのか、公立の佐賀北の応援一色にあっという間に変わる。

 これにはマウンドの野村もペースを狂わせた。際どい球がすべてボールと判定される不運もあって四球を連発し、押し出しで1点。ここで佐賀北の三番・副島浩史が劇的な満塁弾を放つ。

「初球ファウルで、2球目は近めのボール球。であるならば、3球目はセオリーどおり『アウトコースのスライダーかな』と。で、思い切り踏み込んで、スライダーを打ったんです。打った瞬間、入るとは思わなかった。あまり覚えていないですが、打った感触すらなかったと思います。何度かスコアボードを振り返って『これで逆転打よな?』って。ダイヤモンドを回っている途中も、スコアボードを何度か見ているはずです」とのちに副島は語っている。

 そして、9回を久保が抑え、佐賀北が頂点に。佐賀勢の優勝は、これも決勝戦に満塁弾が飛び出た94年の佐賀商以来。「佐賀県勢決勝満塁弾の神話」は、13年ぶりによみがえったのだった。

写真=BBM
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