プロ野球選手は高校卒業後に入団する選手もいれば、大学、社会人を経て入団する選手もいる。年齢が近くても、プロに上がるまでのプロセスがまったく違うだけに考え方も異なる。だが、だからこそ刺激し合えるのかもしれない。
楽天の松井裕樹は2014年、ドラフト1位で桐光学園高から入団。2年目から抑えに抜擢され、チームの顔へと成長を遂げた。しかし、今季は思うような投球ができず、二軍落ちも経験。現在はリリーフとして登板を重ねながら、クローザーへ返り咲く道を模索中だ。
そんな松井だが、最近は心に余裕を持てるようになったと話す。その考え方に大きな影響を与えたのがチームメートの
高梨雄平だ。「引きずるタイプ」と話す松井は、リリーフ転向後は落ち込む日々も多かったという。高校まで先発を務めていただけに、毎日試合がある中で、気持ちを切り替える作業は簡単ではなかった。
「自分にないものを欲していたのかもしれません。そういった意味で高梨さんはいろいろ言ってくれるので」。
一方の高梨は早大、JX-ENEOSを経て17年にドラフト9位で入団。2人の年齢差はわずか3歳だが、野球人生は大きく異なる道を歩んでいる。高梨にすれば「打たれないと思えていることがすごい。ずっと世代のトップでやってきている選手だから、そう思えるのかもしれない」。社会人時代にはサポート役に回ることも経験し、野球で生計を立てることすら危ぶまれた時期もあった。だからこそ、視野を広く持ち客観的に自分を見るようになった。
「長い人生の中でプロ野球選手として働ける時間はそれほど多くない。打たれたくないと思うことも大事ですが、試合が終わってからはそのことについて考えるよりもそこから何を学ぶかを考えたほうがいい」
打たれた悔しさから視野が狭くなっていた松井に、高梨の考え方は新鮮だった。そして「考え過ぎるなよ」という一言は余裕がなくなった松井の心をほぐしていく。
「毎日楽しいのが一番です。野球選手の前に人間ですから、1日つまらない日があるともったいないかなって」(松井)
ブルペンを支える若き両腕は、まだまだ輝くであろうその時に向かって、ともに切磋琢磨している。
文=阿部ちはる 写真=BBM