今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 東京オリンピック近づく
今回は『1963年12月9日増大号』。10円上がって定価は50円だ。
いよいよ翌年は東京オリンピックだ。
考えてみればだが、オリンピックが始まれば、いや、それ以前であっても、とても東京でプロ野球という雰囲気にはなるまい。先走って悪いが、64年に関西の
阪神、南海が優勝というのは、面白いめぐり合わせではある。
このオリンピックまでの試合を終わらせるため、3月14日開幕で動いているパでは東映の渡米キャンプ中止が決定。3月初旬には帰ってこなければならず、ほぼメジャーとの合同練習ができないからだった。
国鉄監督は既報どおり、
浜崎真二が退任し、サン
ケイと関係が深い
林義一元阪神コーチとなった。
11月21日には映画「勝利の旗」がクランクイン。巨人の選手が実際に出てくるカラー映画で、以前は時々CSテレビで流れていた。なかなか貴重なものである。
多摩川での撮影で、
長嶋茂雄の最初のセリフはこんな感じのものだったらしい。
ベンチで空を見上げる長嶋。これに
藤田元司が声をかける。
「シゲ、何を見ているんだ」
長嶋答える。
「空ですよ。神宮で八本目(東京六大学記録の通算8本塁打)を打ったときと同じような空なんですよ」
ここで傍にいた広岡達郎が、
「あの八本目は忘れられないだろうからな」
となる。
しかし長嶋が“はまった”。「空ですよ」のセリフが出ず、ついには涙を流し大笑い。女優の淡島千景ら共演者もつられて笑いだしてしまい、収拾がつかなくなったらしい。
ではまたあした。
<次回に続く>
写真=BBM