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U18アジア野球選手権リポート

インドネシア代表の「三番・捕手」 母国の野球発展を願う男は明徳義塾3年生

 

勝利へ近づくための「組織論」をチームへ注入


「野球・ソフトボール活性化委員会」が9月4日、アジア野球連盟を通じて、インドネシアチームにグラブ22個が贈呈された(写真中央のリム・アンダーセンは、明徳義塾高に所属する捕手である)


 第12回BFA U18アジア野球選手権大会が9月3日、宮崎で開幕した。18歳以下のアジアNo.1を決める真剣勝負の場ではあるが、一方で参加チーム同士の「友好」に加えて「野球振興」も大きな位置づけとしてある。

 野球用具を扱う国内メーカー21社による「野球・ソフトボール活性化委員会」から4日、アジア野球連盟を通じて、インドネシアチームにグラブ22個(右20、左2)が贈呈された。アジア地域の野球支援と発展が目的で、スリランカへも同数のグラブが贈られている。

 インドネシアの「三番・捕手」と中心的存在のリム・アンダーセンは明徳義塾高(高知)に在籍する3年生の野球部員だ。グラブ贈呈に関して「インドネシアにも日本のメーカーのグラブは売っていますが、高価なので、うれしいです」と感謝の言葉を述べている。

 YouTubeで大阪桐蔭高・森友哉(現西武)のプレーを見たのがきっかけで「甲子園に行きたい!!」と、多くの留学生を受け入れている明徳義塾高の門をたたいた。まったくしゃべれなかった日本語もこの3年間で、著しく向上。土佐弁、関西弁交じりで笑顔で受け応えているのが印象的だった。

 明徳義塾・馬淵史郎監督から練習熱心さが認められ、今春のセンバツ甲子園ではプラカードの大役を務めた。今回、高校日本代表でプレーする同校の右腕エース・市川悠太とは寮で同部屋であり、毎日のようにブルペンでボールを受けてきたという。

 今回はグループが別で対戦は実現しそうにないが、日本チームと同宿であり、市川とは「頑張ろう!!」と健闘を称え合ったという。

 リム・アンダーセンはU-12、U-15に続き、3世代連続で代表入り。2週間の練習を重ねて、宮崎入りした。この3年間、日本の高校野球で最も学んだのは「コミュニケーションの大切さ」である。いくら個の技術があっても、チームとして機能させなければ、ゲームを展開することはできない。チームを鼓舞させるための声かけなどを、積極的に行った。勝利へ近づくための「組織論」を、インドネシアチームへ必死に浸透させている。

 3日のチャイニーズ・タイペイとの初戦は0対29の5回コールドで大敗したが、4日の中国戦は3対11と9回まで全力で戦った。試合を重ねるごとに、成長が目に見える。

 リム・アンダーセンは高校卒業後は関東の大学でのプレーを希望しており「メンバーに入りたい」と目を輝かせる。インドネシアはバドミントンがメジャースポーツであるが、将来的には「監督になりたい!!」とインドネシア野球の発展へ力になりたいという。

 東京で行われる2020年の五輪で野球・ソフトボールは正式競技として行われるが、以降は未知数。国際的な「振興」なくして、五輪競技の存続は難しいと言われている。インドネシア、香港、スリランカは、一次リーグにおけるアジア3強(韓国、チャイニーズ・タイペイ)との対戦では、大差のゲームが続く。しかし、野球先進国による今回のような地道な活動が、競技人口を拡大させる効果があり、全体のレベルアップへとつながっていくのだ。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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