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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

3位までわずか0.5差 1989年パ3強V争いの記憶

 

西武戦で近鉄・ブライアントの伝説の4連発が飛び出した89年の終盤


 西武の独走一転、ソフトバンクの猛烈な追い上げもあり、風雲急を告げそうなパ・リーグ。9月4日現在、首位・西武に対して2位・ソフトバンクが4.5ゲーム差、3位・日本ハムが6ゲーム差と一時より迫ってきている。

 パ・リーグの三つ巴といえば1989年のシーズンが思い起こされる。優勝した近鉄と2位・オリックスはわずか1厘差、3位・西武とは0.5ゲーム差という大混戦だった。

 語り継がれるのは近鉄・ブライアントの4連発だ。10月12日、西武とのダブルヘッダー。西武が第1試合に勝ち、川崎球場でロッテとダブルヘッダーを戦う2位のオリックスが1試合目に負けか引き分けた場合、第2試合で優勝が決まる可能性もあったが、ブライアントのバットがそれを打ち砕いた。

 第1試合、辻発彦の2ランなどで近鉄は3回までに4対0とリードされた。4回、ブライアントが46号ソロを放つも、5回、すぐに1点を返される展開。しかし6回、西武先発の郭泰源が突然乱れ、無死満塁でふたたびブライアント。高めの甘いスライダーを見逃さず、同点満塁弾を放った。

 同点のまま8回、マウンドには渡辺久信。打席のブライアントは背番号41が投じた渾身のストレートをライトスタンド上段へ突き刺した。呆然とした表情でマウンドにヒザを着いた渡辺久。6対5。近鉄が勝利すると、第2試合も2対2と同点の3回、ブライアントの2打席目、またも豪快なスイングでセンター左へ打球を運んだ。1打席目は敬遠だったから、4打数連続本塁打となる。勢いに乗った近鉄は15安打、14得点で大勝。マジック2が灯り、前年度「10.19」の悔しさを晴らす、優勝へと突き進んだ。

 ただ、このシーズン、西武・森祇晶監督にとって、ブライアントの3連発より、もっと衝撃的な試合があったという。10月5日のダイエー戦だ。

 この試合、3回までに西武が8対0とリードし、楽勝ムードだったが、中盤から小刻みに得点を許し、9回表にバナザードに本塁打を浴びて引っくり返されてしまった。その裏、西武は2点を返したが、あと一歩及ばず、12対13で敗れ去った。

「8点差を逆転された経験は現役時代から通じてなかった。もし、8点差を守り切ってダイエーに勝っていれば西武が優勝していたはずだったから痛恨だった」と、のちに森監督は語っている。

 今年の西武も9月1日のオリックス戦(京セラドーム)で5回表まで8対1とリードしていながら、9回裏にサヨナラ3ランを浴びて8対10と敗戦。7点差を守れずに負けた試合から雲行きが怪しくなってきたが……。果たして、その結末はいかに――。

文=小林光男 写真=BBM
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