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オリックス・小田裕也の“心の変化”

 

昨季の安打は、わずか1だった小田だが、今季は37安打で規定打席未到達ながら打率は3割超。努力から生まれた“心の余裕”が好結果を呼んでいる


 そんなことができれば、誰も苦労しない――。そんな声も聞こえてきそうなのが、多くの選手が口にする「気持ちで打ちました」。ただ、やはり“心”は重要だと感じさせるのが、オリックス小田裕也の“意識”だ。

 プロ3年目の昨季の安打数は、わずか1。新人年の2015年終盤に一軍出場を果たし、プロ安打、本塁打、盗塁を記録するなど、俊足巧打の左打者として期待を寄せられながら、伸び悩んでいた。

 迎えたプロ4年目。春季キャンプでは、すり足気味の打撃フォームを試すなど、思考錯誤を繰り返した。形ばかりではない。

「自分の武器はやっぱり足。だから塁に出るには、低い打球を打つことが大事」と明確な意識を持ち「(バットの)ヘッドが寝ちゃう傾向が強いので、立つ感覚を意識付けるために」と両手を離してスイングするなど、徹底的に目指したのは打撃向上。飛距離に目が向くロングティーでも、下半身を使うためにノーステップで低い打球を繰り返し放ち続けていた。

 成果は結果に表れていく。開幕一軍を手にすると、主に守備固めや代走での出場も、限られた打席で安打を放ってアピール。5月17日のロッテ戦(ZOZOマリン)では、代走で途中出場すると、同点で迎えた9回表に内竜也のタテのスライダーに対し、バットのヘッドを利かせって中前に弾き返す勝ち越し打を放って見せた。

 以降も結果を残し、交流戦から先発出場が増。中堅守備で左手首を骨折して一度は離脱するも、復帰後もスタメンに名を連ねている。9月13日時点で76試合に出場し、重ねた安打数は37。目立った数字ではないが、昨季の1安打から飛躍的に数字は伸びた。規定打席未到達ながら、打率は.301を記録している。

 キャンプからの取り組みの成果が好結果につながっているのか。一度、好調の要因を聞いてみた。すると、答えは“技術”ではなく“心”だという。

「途中出場とから打席数も限られていることが多い中で『どうせ打てないだろう』と開き直れたことが大きいんですよね。そうすると、余裕が生まれて結果が出る。結果が出るから、また余裕が生まれる。その好循環が一番、大きいと思います」

 開き直れたのは、胸を張れるだけの鍛錬を積んできたからに他ならない。“心技体”の言葉があるように、やはり心と技は、つながっている。

文=鶴田成秀 写真=BBM
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