9月9日、BCリーグ・栃木の村田修一が引退した。引退セレモニーでの涙は多くのファンの胸を打っただろう。
楽天の
藤田一也もその一人だ。
「まだまだできると思っていた。現役選手として若い選手にいろいろ教えてほしかった」
横浜時代にはチームメートとしてプレーした。レギュラーが確立されず、一軍にいてもベンチを温める日が続いていた藤田は「出たらアピールはできますけど、失敗したら二軍に落ちてしまいますから。若いときは試合に出たくないと思うこともありました」という。
だが、村田はそんな藤田に「一軍にいることで満足するんじゃなくて、この世界は試合に出てなんぼ」と説いた。
「その言葉がなかったらレギュラーも取ることができていなかったと思うし、この年まで現役でできていないと思う」
トレードによる楽天への移籍後も、そして今も、常にレギュラーとして試合に出ることを求めているという。
また、村田のある行動にも感銘を受けた。
「裏方さんのこともすごく大事にするんです」
シーズン前後には裏方として働く人たちを食事に誘っていたという村田。
「『1年よろしくお願いします』と『ありがとうございます』を伝えるんです。シーズン中も暑い日にはお金を渡し『ジュースなりアイスなり買ってこい!』と。バッティングも豪快ですけど、そういうところもすごく豪快でした」
練習のサポートはもちろん、体のケアや戦力分析など、グラウンドに立つため、そして勝利を目指すために欠かすことのできない存在。それを知るからこそ感謝の心を持って接していた。
「その姿を見て自分もそういうことをしていきたいと思ったし、若い選手にも教えていきたいな、と」
年を重ねた今、あらためてその行動の大きさに気づかされた。
「これからも野球以外のことでもアドバイスをもらって、変わらずお付き合いをしてもらいたい」と藤田。そして「ここまで現役を続けられているのも村田さんのおかげ。あのときの言葉がなかったらもうやめていたと思うんです。村田さんの年齢以上までプレーできるように頑張りたい」と続けた。
今も「出たい気持ちが強い」と語る36歳。感謝の気持ちを持って1年でも長く現役でプレーすることが、よき兄貴分だった村田への恩返しだ。
文=阿部ちはる 写真=BBM