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あれから10年。進化し続けるヤクルト・近藤一樹

 

10年前の近藤投手(左)と現在(右)。投げっぷりもスタイルも当時とほとんど変わらない


 9月12日、 巨人杉内俊哉投手が引退会見を行った。その日のナイトゲームは東京ドームで巨人対ヤクルト戦が行われた。この試合、ヤクルトの4番手としてマウンドに上がったのは近藤一樹投手だった。9回裏1対1の場面で登板し三者三振に斬って取り、チームは12回引き分けに終わった。この引き分けで近藤に39ホールドポイント目が付き、ヤクルトの球団記録に並んだ(3日後の甲子園での阪神戦で球団記録更新)。

 杉内投手は引退、近藤投手は記録を作った――。ふと10年前の試合を思い出した。それは2008年10月1日の京セラドーム。オリックスソフトバンク戦だ。この試合は一大イベントが待っていた。当時オリックスに在籍していた清原和博氏の引退試合だった。

 この試合の先発を任されたのが杉内投手(ソフトバンク)と近藤投手(オリックス)。試合の結果は2人とも完投。杉内投手が8回8安打4失点。近藤投手が9回5安打1失点。ともに128球の熱投。この勝利で近藤投手は自身初の10勝目を挙げた。

 あのときの2人の投げ合いを思い出した。清原氏の引退に花を添える素晴らしい投手戦。杉内投手は清原氏に二塁打を打たれながらも、8回の打席は空振り三振に斬って取った。近藤投手は9回表、この試合4つ目のダブルプレーで締めた。

 あれから10年――。杉内投手は故障が完治しないまま、惜しまれて引退を決意。一方、近藤投手。4度の手術を受けながら、2016年にヤクルトに移籍し、昨季中継ぎで自身初の50試合以上に登板。そして今季はセットアッパーとしてチームに欠かせない存在となった。

 移籍後初の秋季キャンプでの様子を聞いたとき、こんな言葉が帰ってきた。「(ヤクルトは)故障者として見てくれないんです(笑)。ただ、これだけ期間を詰めてブルペンで100球以上投げたことはありませんでした。でも、これが意外と投げられるんです」。

 少しニヤリとしながら話す独特の表情で、満足な様子を見せてくれた。オリックスで実績を作っただけに、手術後は大事に回復を待つ方向性だったのだろう。しかし、移籍したことで自分の可能性を見つけ、今や70試合登板も近い。「満身創痍ですよぉ」と言いそうだが、まだまだチームのために投げるだろう。

 そして、杉内投手の分まで――とはこちらの感情移入し過ぎだか……。近藤投手にとっては08年以来のクライマックスシリーズ登板が待っている。あのときは、第1戦の先発投手として日本ハムダルビッシュ有(現カブス)と投げ合った。惜しくも5回途中4失点で負け投手になっただけに、今度はホールドポイントで、あのときの借りを返してほしいものだ。

文=椎屋博幸 写真=BBM

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