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来年のドラフト戦線を牽引する星稜高・奥川恭伸「また代表のユニフォームを着たい」

 

2年生で唯一、高校日本代表でプレーした星稜高・奥川。U-18アジア選手権(宮崎)ではわずか1試合1イニングのみの登板に終わるも、今後につながる収穫を得ている


 奥川恭伸に侍ジャパン高校日本代表での感想を求めると、想定外の答えが返ってきた。

「大会期間中はなかなか投げられなかったが東京での合宿中、大学生と対戦したことが最も良い経験になりました」

 星稜高のエースは2年生で唯一、高校日本代表に選ばれた。来年のW杯(韓国で開催予定)までの2年任期である永田裕治監督は「来年も来てほしい。そのために連れてきた」と、戦力の一人として期待をかけていた。

 しかし、150キロ右腕は思うような投球ができない。立大との練習試合では1回1失点。明大との練習試合では先発したが序盤2イニングで3失点を喫し、3、4回は立ち直ったが、5回にも1失点して降板している。本大会ではスリランカとの一次ラウンドで6回に救援。1イニングを3者連続三振と圧倒したが、WBSCランキングにおいても日本より下のランクであり、永田監督が納得する投球内容ではなかった。試合後は練習試合から解消されない課題に、やや厳しい評価を下していた。

「球速自体は出ているが、ボールが高い。末恐ろしいピッチャーになる要素はある。ただ、今はどうか……。勉強だけでは終われない。3年生の思いも背負ってやってほしい」

 日本は韓国との一次ラウンド、チャイニーズ・タイペイとのスーパーラウンド初戦で連敗し、決勝進出の可能性が消滅した。中国とのスーパーラウンド第2戦は「消化試合」であり、同カードの結果に関係なく、翌日も中国との3位決定戦が控えていたのである。

 つまり、中国とのスーパーラウンドは、奥川が経験を積むには最高の舞台だった。しかし、雨天中止により、そのチャンスが結果的に奪われる形となっている。3位決定戦は永田監督が「銅メダルを死守する」と、絶対に落とせない戦い。指揮官が信頼の置く横浜高・板川佳矢、大阪桐蔭高・柿木蓮、大阪桐蔭高・根尾昂と3年生3人が投入され、6回コールドで有終の美を飾っている。

 ブルペン、ベンチで過ごす時間が長かった奥川としては、悔しい高校日本代表での18日間だった。しかし、先輩と過ごした期間は代え難い財産。根尾と同部屋だった。投手としての心構え、投球術、登板までの過ごし方など、勉強になることばかりだった。根尾は期間中「奥川は全部敬語なんです。使わなくていいよ、と言ったんですが……」と言っていた。交流も深まり、最終日に確認したが「もちろん敬語です!!」と、奥川は真顔で語っていた。

 そして、背筋を伸ばしてこう、続けた。

「来年も選ばれる保証がありませんが、この1年頑張って、また代表のユニフォームを着て引っ張っていけるようになりたい」

 奥川の年代はすでに、2年生で実績を残している好投手が多い。U-18代表の第一次候補にも奥川のほか大船渡高・佐々木朗希、横浜高・及川雅貴、日大三高・井上広輝、菰野高・岡林勇希、創志学園高・西純矢の計6人が名を連ねた。2019年ドラフトへ向けても、高レベルでの「世代NO.1」争いから目が離せない。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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