週刊ベースボールONLINE

編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

広島「お待たせV決定」の裏で見えた「不動心」

 

25日、試合後にヤクルトの試合の行方をベンチで見る広島ナイン


 広島が9月26日のヤクルト戦(マツダ広島)で、3年連続9回目のセ・リーグ優勝を決めた。3連覇はセ・リーグに限れば巨人以外では初。一昨年、昨年は達成できなかった本拠地のファンの前での胴上げも27年ぶりに実現させた(もちろん、マツダ広島では開場10年目で初)。

 とはいえ今回の優勝決定は、マジック「1」としてから連敗し、3日目でようやくのV。マジック「2」として「きょうで優勝決定」の可能性が生まれてからは4日目と、どちらかと言えば、「お待たせしました」の優勝決定だった。

 ファンと、われわれ報道陣は、「今日か、今日か」と、散々やきもきした挙げ句の優勝であり、自然と報道もそういうムードになるので、「選手たちもなかなか優勝が決まらなくてさぞかし焦ったのだろうな」と思われる方もいるかもしれないが、実は、現場での感触から言うと、少なくとも選手たちの発言からは、「焦った」という感じはほぼ感じられなかった。カープナインのメンタルの強さには、これまでも何度かこのコラムで触れてきたが、ここに、またカープナインの「心の強さ」を見た思いがする。

 もちろん、カープのナインとて、やきもきはしただろう。「さあ、今日こそ地元ファンの前で胴上げだ」と意気込むものの、自分たちは勝てず、試合後には2位のヤクルトが勝つのをただ見ているだけ、という日が続いたのだから。緒方孝市監督も連日、「これだけのお客さんが来てくださっているのに、決められなくて申し訳ない」とコメントしていたし、優勝後の会見でも「マジック1になってからは、(球場も)いつもと違う雰囲気になって、プレッシャーというか、そういうものはあった」と鈴木誠也選手も認めている。

 だが、それらはあくまでやきもきやプレッシャーであって、それが焦りまで生んでいたか、というとそんなことはなく、全体的には、カープナインは割合いつもと同じように落ち着いていたように思える。

 優勝が延びていた間、選手のコメントは、誰に聞いても総じてこんな感じだった「もちろんきょう決めたかったですけど、皆で一生懸命戦った結果、勝てなかったんだから仕方ない。ベンチのムードはいつもと変わりありません。反省すべきところはして、また明日、勝てるようにしっかり準備するだけです」。

 もちろん、優勝が延びているといはいえ、現実に逆転されるようなゲーム差ではないこと、本拠地9連戦だったので、多少延びても本拠地優勝を逃す可能性はかなり低いことなど、焦る必要のない状況がそろっていたことは確かだが、とにかく、「自分たちの形が崩れていさえしなければ、1勝、1敗で一喜一憂しない」という感じが徹底しているのである。

 もちろん、1勝、1敗に対する執着は、人一倍持っている。持っているが、だからと言って、結果に対していたずらに喜びすぎたり、ガックリと落ち込んだりはしない。そしてやるべきことを冷静にやっていく。まるで「不動心」という言葉を具現化しているかのような、このナインのメンタルには、やはり3連覇するチームの強さを見た思いがする。

 さて、リーグ優勝を決め、次はCS(広島はファイナルステージから)、それに勝てば日本シリーズと、短期決戦に舞台が変わる。短期決戦は、1勝、1敗の重みが何倍にもなってくるので、ちょっとペナントレースとは状況が変わり、「焦り」を誘発しやすい状況がそろってくることになる。果たしてそこでもカープナインが1勝、1敗に一喜一憂しない不動心をどこまで貫いていけるか。これが、一昨年、昨年と実現できなかった日本一へのカギの一つになってくるような気がする。

文=藤本泰祐 写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング