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週刊ベースボール60周年記念企画

川上哲治、別所毅彦の麻雀比較/週べ1964年4月27日号

 

 今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

西鉄・若林忠志コーチ、病床の涙


表紙は左から大洋・別所毅彦コーチ、稲川誠




 今回は『1964年4月27日号』。定価は40円だ。

 2年目を迎えた杉浦清監督率いる中日は、開幕前は優勝候補とも言われながら開幕3連敗と出遅れ、そのまま低迷が続いている。

 愛情にあふれながらも過激で知られた中日ファンはあまりのだらしなさに怒り狂い、球場では杉浦監督に強烈なヤジを飛ばし、球団事務所への苦情の封書、ハガキも殺到していた。

 4月11日時点のセ・リーグの首位は大洋、2位が阪神、3位が巨人
 評論家となった前阪神コーチ、青田昇の解説記事があった。
 巷間で話題の巨人・川上哲治監督、大洋・別所毅彦コーチの関係を麻雀にたとえながら説明した個所が面白かったので抜粋する。
3人は巨人のチームメートであり、ともに青田のポン麻雀仲間(ライバル)であった。

「川上は非常にねばっこい性格だ。賭け事をやると、その人間の本性が現れるというが、そのとおりで、麻雀をやっても川上は非常にねばっこい。自分があがらんかったら、他人にもあがらさんという麻雀をする。自分の目が出なかったら、じっと待つ。

 だから川上とやるときには、いらだったり根負けしたりしてはいかん。大きなばくちをしかけたら損だ。
 
 別所のほうは非常に荒っぽい。勝つときは日の出の勢いで勝つ。ところが落ち目になったとき、投げやりになるところもある。勝つときにはものすごく勝つが、負けるときにはガタッとくる。

 いまの別所は麻雀で言ったら、つきについて相手がいいパイを振り込んでくれる。それでどんどんあがっているところだ。
 
 だからこんなとき、なかなか大洋は崩せない。じっくり取り組んで、1つずつ星を獲っていく。こうすれば必ず落ち目になるときがくる。このときムチャクチャたたけば大洋は脱落する」

 54歳、西鉄の若林忠志コーチが胃潰瘍で入院したが、実際には胃ガンだったことが分かった。本人は早期発見であり、すべて切って回復したと思っていたようで、
「だいぶ無理してきたから、もうなってもいいころだろう。まあ発見が早くてよかった。胃がすっきりしたから酒がうまいよ」と話していた。

 入院中も若い投手、特に伸び悩んでいた時期にさまざまなアドバイスを送り、自らが育てたともいえる左腕・井上善夫については随分、心配していたが、この時点で井上は5戦無敗と大躍進。

 井上が見舞いに来たときは、若林は涙を流しながら、

「君はまだまだ伸びる投手だ。いい球を持っている。打たれてもいいから思い切って投げていくのだ」

 と語ったという。
 残念ながら、若林は末期ガンで翌65年の春に死んだ。
 本人は最後まで知らされなかったというが、すでに予感はしていたのかもしれない。

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM
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