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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

「甘くないな」と漏らしたロッテの黄金ルーキー・藤岡裕大

 

攻守に課題は散見されたが、藤岡は1年目から総合力の高さを見せつけた


 見事に1シーズンを駆け抜けようとしている。ロッテのドラ2ルーキー、藤岡裕大だ。残り7試合となった時点で全136試合に出場、そのうち開幕戦を含めた132試合で遊撃のスタメンを飾っているのだから、即戦力の名に恥じない活躍だと言っていいだろう。

 守備面では前評判どおりの実力を見せつけた。「送球がばらついたりしたことがけっこうあった」と課題を口にしながら、「捕球の面では自分なりにできたかなと思う」。プロの一線級でも通用する確かな手応えを得た。

 強じんな脚力と、自らの強肩への自信が、時に躊躇なく深めのポジションを取ることを実現させ、広大な守備範囲を生み出している。「めちゃくちゃ打てるバッターじゃない。だったら二遊間が守れないとプロの世界では厳しいと思ってやってきた」。そんなアマチュア時代からの取り組みが、鮮やかに実を結んだ。

 だが、「打てるバッターじゃない」という己の懸念は、ある意味で現実のものとなってしまった。3安打の鮮烈デビューとなった開幕戦をはじめ、スタートは決して悪くなかった。3・4月を打率.235で乗り切ると、5月は月間打率.280とバットを上向かせ、6月も同.259と踏ん張った。随所にパンチ力があるところも見せつけながら。

 しかし、7月に入ると急失速。「夏場の体力が自分の中では一番つらかった」と振り返るように、経験したことのない疲労に襲われた。下半身に力が入らないと感じる日が増えていき、月間打率は.198にまで落ち込んだ。

 打撃で結果が出ないという事実は、メンタル面にも悪影響を及ぼす。「打てないと、どうしても不安を持ったまま次の日を迎えてしまう。毎日試合があることの大変さ、切り替える難しさ」を痛感する日々。まさに悪循環に陥った。

「そういうところで、やっぱり(プロの世界は)甘くないなって感じましたね」。自虐めいた微かな笑みを浮かべならそうつぶやいたが、すぐに「でも、1年間こうやって試合に出させてもらったから見えてくることが、たくさんある」と前を向いた。「メンタルの切り替えも、走塁も、送球も。経験を生かしながら来年につなげていきたい」。

 開幕前から、そして開幕してからも、トヨタ自動車の先輩にして昨季の新人王に輝いた西武源田壮亮に続くタイトル奪取を公言していた。おだやかな語り口とは裏腹に、はっきりと目標を口にする大胆さに驚かされたものだが、その気持ちの強さをしっかり結果として表現したことは間違いない。たとえ新人王には手が届かなかったとしても――。

文=杉浦多夢 写真=BBM
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