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週刊ベースボール60周年記念企画

王シフト登場/週べ1964年5月25日号

 

 今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

外国人選手の日本野球評


表紙は左から阪神村山実山内一弘




 今回は『1964年5月25日号』。定価は50円だ。
 5月5日、記録的なペースでホームラン量産を続けていた巨人王貞治対策として、広島は野手を極端にライト方向に寄せて守らせる「王シフト」を敷いた。

 これは白石勝己監督の指示で、川本徳三スコアラーが親会社・東洋工業(現マツダ)の自動車製造用のコンピュータを借り、集計した打球データから生まれたものだったという。

 ヒントになったのが、メジャーの「ブードロウ・シフト」だ。1946年、ほぼ引っ張り一辺倒の打撃を美学としたレッドソックスの強打者テッド・ウィリアムズを封じるため、インディアンスのプレーイングマネジャー、ブードローが考案したものだった。
 アメリカ流の命名なら「白石シフト」となっていたかもしれない。

王の打席で極端にライト側に寄った広島の守備陣


 
 外国人選手に英語でインタビューし、ホンネに迫るというコーナーもあった。
 英語でインタビューは当然と言えば当然。当時の球界は日系人の元選手が通訳となるケースが多かったが、このときは編集部で通訳を準備したという意味だろうか。

 まず西鉄のウイルソン。彼は日本野球の選手酷使について問題提起し、「身近な例で、稲尾のことを言いますけど、彼の不調は明らかにオーバーワークによるものです」と語っている。
 前年74試合に投げ28勝を挙げた稲尾和久は、この年の5月9日時点で4試合に投げ0勝1敗、防御率は11.57だった。

 阪急のスペンサーは長時間の練習への文句とともに、日本人選手の全力疾走の欠如を批判する。
「内野ゴロでもキャッチャーフライでも、全力疾走を怠る姿をしょっちゅう見ますが、相手がいつミスをするかもしれないという期待を自ら捨てていてはファンに申し訳ないじゃないですか。
 ましてや外野へ行って捕られそうだと思うと、せいぜい一塁を回るぐらいのランニングしかしないとは、どういう心掛けなのか。せめて二塁を踏むくらいは走るべきです」
 
 スペンサーは攻守の交代も必ずダッシュしていたという。のち80年代になると、巨人・クロマティらの印象が強く、外国人選手はやたらガッツポーズをし、走塁に熱心でないというイメージになっていくが、このころは違ったようだ。

 また最後に選手への苦言とし、
「休みの日くらいゆっくり休養したらどうでしょう。休日に麻雀などをして頭を浪費するなど、私はどうかと思います」

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM

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