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廣岡達朗コラム

3度目の原辰徳政権の最大の見どころは?/廣岡達朗コラム

 

責任の所在を曖昧にしてはならない


2014年、リーグ3連覇を果たして胴上げされた原辰徳監督


 高橋由伸監督が辞任した。

 私の時代は、日本シリーズに出られなかったら監督のクビが飛んだものだ。高橋は3年間ペナントから遠ざかったのだから、とっくに辞めていてもおかしくなかった。

 高橋に限ったことではないが、最近はピンチの場面でマウンドに足を運ぶ監督の姿を見たことがない。尾花高夫巨人の投手コーチだったときに、わざと「野球協約が変わったのか」と言いながら「どうして監督はマウンドに行かないのか」と問い詰めた。すると、監督は何を言っていいのか分からないらしい。別に、専門的なことを言う必要はない。ただ気合を入れればいいのだ。

 もっとも、高橋だけに非があるわけではない。指導者として勉強する場を与えていない人間が悪い。

 指導者育成のために必要なのは日本プロ野球OBクラブの充実である。往年の名監督、名選手をOBクラブの講師に迎えて彼らの成功事例を次代の監督候補に伝え、そこで研さんを積んだ人間を監督として12球団に送り込む。そういう提言すらしないコミッショナーは無責任だ。

 本当は、高橋に監督になれと言った人間に任命責任があるのだが、そこがうやむやにされるのが巨人だ。勝敗の責任を取って高橋は辞任した。山口寿一オーナーは、今後の処遇に関して「何かの関係は保っていきたい」と話している。オーナーは高橋のことが好きだという。ならば「野球とは、指導とは何かを一生懸命に勉強しろ」と言う必要がある。

 高橋も、一度世界を見て回るといい。私が現役引退後、なぜアメリカ、中南米などを回ったかというと、一つには川上哲治監督との確執があったからだ。川上巨人より上に行きたい、その一心で野球を勉強した。

 高橋はまだ若い。極端にいうと監督に就くのは60歳からでいい。体の動くうちはどんどん人を教えることだ。年齢を重ねるに伴い頭の中が冴え、思考に体がついていけなくなったときに采配を振るえばいいのだ。

 巨人は、プロ野球の球団がどのように成り立っているのか、今こそ考えるべきだ。フロントがGMに「勝て」と厳命する。編成の全責任を負うGMは、いい選手を監督に提供。そこで選手を集められなかったらGMが、集めても監督が使い切れなかったら監督がクビ。簡単なことだ。

GMを置くのかも焦点


 鹿取義隆GMも責任を感じているようだが、GMの仕事とはどういうことか知っているのか。本来、監督とは連絡を密にして「今日はここが良かった」「これは違う」と毎試合、チェック機能を働かせるべきなのだ。

 いずれにしても責任の所在が曖昧になっているのが今の巨人だ。

 新監督には原辰徳が決まったようだ。原は通算12年間、立派に巨人の監督を務め上げた。誰が監督をやろうと私は構わない。原が来季から指揮を執る間に次代の指導者を育成できるかどうか、そこに最大の見どころがあると感じている。

 来季の巨人はどこから手を付ければいいのか。キャンプでやるべきことをやればいいのだ。私が若かったらすぐに勝たせることができる。なぜなら素材は揃っているからだ。

 とにかく原のお手並み拝見だ。GMを置くかどうか、そこも焦点だ。

廣岡達朗(ひろおか・たつろう)
1932年2月9日生まれ。広島県出身。呉三津田高、早大を経て54年に巨人入団。大型遊撃手として新人王に輝くなど活躍。66年に引退。広島、ヤクルトのコーチを経て76年シーズン途中にヤクルト監督に就任。78年、球団初のリーグ制覇、日本一に導く。82年の西武監督就任1年目から2年連続日本一。4年間で3度優勝という偉業を残し85年限りで退団。92年野球殿堂入り。

写真=BBM
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