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ドラフト会議物語

【ドラフト会議物語35】逆指名で高橋由が巨人、川上が中日。大型左腕の川口はオリックスへ【1997年】

 

今年は10月25日に行われるドラフト会議。毎年、金の卵たちが、どの球団へ進むか大きな注目を集める“一大イベント”で、さまざまなドラマも生まれる。今年で54年目を迎えるドラフト会議の歴史を週刊ベースボールONLINEでは振り返っていく。

高橋、川上以外の1位は伸び悩み


高橋の逆指名会見。実際には笑顔もあったが、マスコミに使われたのは渋い表情が多かった


1997年11月21日
第33回ドラフト会議(新高輪プリンスホテル)

[1位選手]
ロッテ   渡辺正人(上宮高)
中日    川上憲伸(明大)
ダイエー  永井智浩(JR東海)
阪神    中谷仁 (智弁和歌山高)
日本ハム  清水章夫(近大)
巨人    高橋由伸(慶大)
近鉄    真木将樹(法大)
広島    遠藤竜志(NTT関東)
オリックス 川口知哉(平安高)
横浜    谷口邦幸(町野高)
西武    安藤正則(専大)
ヤクルト  三上真司(敦賀気比高)
 
 仕方がないとも言えるが、この年のドラフトは、会議前に半分以上終わった感があった。実力的にも、持っている“華”の部分でも、プロで即中心選手と言われた大学生2人の行方が逆指名で決まっていたからだ。

 ただ、2人のドラマは対照的だった。通算28勝を挙げた明大の川上憲伸は「いつの間にかそうなっていた」と、のちのインタビューで笑っていたが、明大OBである星野仙一監督率いる中日をすんなり逆指名。一方、通算23本塁打の東京六大学新記録を作った慶大の高橋由伸は、巨人、ヤクルト、西武などの間で揺れ、悩みに悩んで、最終的に巨人を逆指名した。2人はいずれも、それぞれのチームを代表する選手に成長した。

 残る注目は平安高の左腕・川口知哉だった。ビッグマウスと言われ、「オリックス以外なら社会人」と明言していたが、近鉄、オリックス、横浜、ヤクルトの競合になる。それでもオリックス・仰木彬監督が川口にあやかり左手でクジを引き、しっかり引き当てた。意中の球団に決まった川口は安堵の笑みを浮かべ、左手でガッツポーズ。しかし、制球難に苦しみ、残念ながらプロでは大成できなかった。

 ほかの1位ではダイエーが99年優勝に貢献した永井智浩、ロッテが内野のユーティリティー・渡辺正人を指名したが、正直、高橋、川上以外は、伸び悩んだ印象がある。

2位指名時にトラブル発生


 2位ではダイエーが永井同様、99年優勝に貢献した篠原貴行(三菱重工長崎)、そして阪神が2003年の20勝投手、大型左腕の井川慶(水戸商高)、ヤクルトが剛球右腕、現ソフトバンク五十嵐亮太(敬愛学園高)。1、2位から川上、井川、五十嵐と3人のメジャー・リーガーを輩出していることになる。3位ではロッテに藤田宗一(西濃運輸)、中日に正津英志(NTT北陸)と中継ぎで存在感を示した名前も並ぶ。

 また、2位指名時にはトラブルが発生した。新沼慎二(仙台育英高)にヤクルト、横浜、日本ハムの3球団が競合。本来ならばヤクルトから順にクジを引くはずが、会議の進行役が日本ハムを指名して、2番目の横浜が当たりクジを引いた。前代未聞の事態に会場は大混乱。機構側はミスを認めて陳謝したが、横浜の交渉権獲得は有効とされた。

 4位にはダイエーが永井、篠原同様、99年優勝に貢献した右腕・星野順治(NKK)。96年ドラフトの際、「ダイエードラフトの集大成」とも書いたが、この年はワキ役的投手の補強で、“来るべき時”の準備をさらに進めていたことになる。ほかにも1年目から打率3割の阪神・坪井智哉(東芝)、日本ハムの飯山裕志(れいめい高)、巨人、中日で活躍した捕手の小田幸平(三菱重工神戸)、1年目の開幕戦で救援ながら勝利投手となった広島の小林幹英、さらにリリーフ、移籍した横浜では先発でも活躍した西武の土肥義弘とプリンスホテル出身者2人がいる。

 ここまで名前を挙げていくと、全体的に渋めの職人肌が多いが、その象徴が中日5位、堅守巧打の井端弘和(亜大)だろう。ほかの5位にも日本ハムが、巨人でも活躍した内野のユーティティー・古城茂幸(国士舘大)、広島が捕手の倉義和(京産大)といる。

<次回に続く>

写真=BBM
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