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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

誰もがあこがれた松井稼頭央という存在

 

2013年の楽天時代、日本一達成時の松井稼頭央


 レギュラーシーズンが終わり、次々と引退選手が発表されていく。今季は一時代を築いたベテラン選手の引退が目立ち、寂しい気持ちを抱えているファンも少なくないだろう。

 その中でも西武の松井稼頭央の引退はファンだけではなく、選手たちにも衝撃を与えた。あこがれの選手、目指すプレースタイルとして、その名を挙げる若い選手も多い。楽天在籍時に、ともにプレーした選手たちも間違いなく松井の影響を受けている。

 田中和基は大学時代にスイッチヒッターに転向する際、松井を参考にしたという。プロ入り後も自主トレをともにし、多くのことを吸収した。またロッテから移籍してきたPL学園高の後輩である今江年晶は「気さくに話しかけてくれて溶け込むことができた」と、その存在に感謝している。

 2016年のオフに東京の自宅に招かれたことが忘れられないという銀次は、2013年の優勝時のメンバーの一人。ショートを守っていたのが松井で、銀次はファーストで何度もその球を受け「ベテランだけど一番キレがあった」と振り返る。当時キャプテンを務めていた松井だが、「プレーで引っ張るタイプだった」と銀次はいう。

「ベテランですけど若手がやりやすいプレーをしてくれましたし、やりやすい環境を作ってくれた。誰よりも声を出しますし、厳しいことも言ってくれますが、それ以上におもしろいことも言ってくれましたね」

 ベテランでありながら偉ぶる様子もなく笑顔でグラウンドに立ち、全力でプレーする。ファンもチームメートも皆その背中にあこがれた。

 タイムリーを打った際に塁上でベンチとハイタッチをする「Burn!」も松井が始めたことだ。距離が離れていても喜びを共有できるため、今でも選手とファンの間で交わされるハイタッチとして浸透している。やはり東北のファンにとっても松井稼頭央という存在はスターだった。

「野球界の伝説の一人がいなくなるのは寂しい」と銀次。だが、こうも続けた。「僕のヒーローは松井稼頭央さん。そのことを思いながらこれからも野球をやっていきたい」。松井が楽天に在籍した7年の間に、優勝の喜びを知り、多くのことを学び、その姿勢に刺激を受けた。それを引き継いでいくのも大事な役割のひとつだろう。

 現在、クライマックスシリーズファイナルステージを戦っている西武。その今季の残り試合が松井の最後の雄姿になる。

文=阿部ちはる 写真=BBM
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