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環太平洋大で発見した「宮西尚生二世」と「秋山翔吾二世」

 

東京六大学の王者にも臆さず


環太平洋大の1年生左腕・仲尾は、左キラーとしての存在感を発揮した


 2007年の開学と同時に野球部の活動をスタートさせた環太平洋大。この秋、4年連続5回目出場の明治神宮野球大会で初の決勝進出を果たしたが終盤、立正大に逆転負け(4対6)。創部12年目での日本一を惜しくも逃したものの、神宮に確かな足跡を残した。

 特に目立ったのは1年生の活躍だ。「左キラー」と「安打製機」を見つけた。サイド左腕・仲尾元貴(生光学園高)は今春のリーグ戦からリリーフ専門で、今大会も全4試合で救援した。もともとはオーバースローだったが、制球難から高校2年時に腕を下げると「人生」が変わった。エースとなった同秋に徳島県大会を制すと、四国大会8強まで勝ち進んだ。

 実戦派のサウスポーは大学で「即戦力」。スライダー、チェンジアップと球種は少ないが、コーナーを丁寧に突くことができ、ストレートも常時130キロ台前半だが、手元で伸びてくる。

 法大との2回戦では5回のロングリリーフで、東京六大学の王者にも臆することなく、立ち向かった。近大との準決勝では8回一死満塁からマウンドに上がると「左打者のほうが得意」と、外角の変化球でカウントを整え、最後は内角ストレートで四、五番の左スラッガーを空振り三振に斬った。

「ミットにめがけて、投げるだけです」

 躍動する姿は日本ハム宮西尚生のようだ。

抜群のバットコントロール


環太平洋大の1年生三番・安藤は抜群のバットコントロールで4試合で5安打を放った


 不動の三番・安藤優汰(米子北高)は抜群のバットコントロールで5本の安打を放った。

 近大との準決勝は左打席から技ありの左前適時打2本で3打点と、チームの決勝進出に貢献した。2本目のタイムリーは、鋭く落ちるフォークにバットを合わせた。実は2ストライクに追い込まれてからは打席の前に立ち、変化する手前でバットを出す工夫を施したのだ。

 NPBを代表する西武秋山翔吾をあこがれの選手に挙げるだけに、ミート力に長ける。

「バットを内側から出して、ヘッドを返さないようにしている」

 素直な軌道だからこそ、ボールに逆らわず、広角にヒットを打てる。

 大舞台で結果を残せたのも、安定した日常生活が根底にあった。環太平洋大では毎朝、6時30分に起床して、10人1グループで1週間ごとに7カ所をローテーションしての寮と寮周辺の掃除を行う。体操をして、おいしい朝食を食べるのが1日のスタートだ。2013年1月から指揮する野村昭彦監督(兄・野村謙二郎は元広島監督)の指導が行き届いており、神宮でもふだんどおりの力を発揮することができた。

決勝では屈辱を味わうも


 しかし、2人は立正大との決勝では屈辱を味わった。準決勝まで3試合連続安打をマークしていた安藤は、4打数無安打と沈黙。2点を追う9回裏は最後の打者となり、この日3つ目の三振を喫した。

「力不足を痛感した。来年は自分が引っ張って、神宮に戻ってきたい」

 仲尾も準決勝まで7回1/3で無失点だった。決勝では1対1から3点を勝ち越した直後、7回表から救援も初失点。8回も先頭打者に二塁打を浴びて、復調の気配を見せることなく、交代。エース右腕・西山雅貴(3年・岡山理大付高)に託したものの逆転され、苦い思いをした。

 初の神宮で「明」と「暗」を味わった2人。「宮西二世」と「秋山二世」が取り返すチャンスはまだ、いくらでもある。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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