1993年オフからスタートしたFA制度。いまや同制度は定着し、権利を得た選手の動向は常に注目されている。週べONLINEでは、そのFAの歴史を年度別に振り返っていく。 上原ら3投手がメジャー移籍
FAで大物選手が海外に流出する傾向が徐々に定着してきた一方で、国内で豊富な資金力を誇るチームがFA選手を獲得する流れは沈静化しつつあった。
セ・リーグから3投手がFAでメジャーを目指した2008年オフ。
巨人からは、プロ1年目に20勝を挙げて新人王に輝き、最優秀防御率、最多勝、最多奪三振、沢村賞いずれも2度ずつの上原浩治がオリオールズへ。
中日からは98年に新人王、04年にはMVPに輝いた
川上憲伸がブレーブスへ。そして
広島からは01年に10勝、08年に再ブレークした左腕で39歳の
高橋建がメッツへ移籍した。
メジャー1年目は故障に苦しんだが、その後はリリーバーとして本領を発揮した上原はレンジャーズを経たレッドソックス時代の13年に、やはりFAでメジャーへ移籍した
佐々木主浩に続く日本人2人目の胴上げ投手となり、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズMVPにも輝いた。
川上は初先発初勝利を含む7勝、40歳でのメジャーデビューとなった高橋建は勝ち星こそなかったものの左のリリーバーとして防御率2.96の安定感を発揮した。この3投手いずれも古巣で日本球界へ復帰している。
【2008年オフのFA移籍】
08年12月4日
野口寿浩(
阪神→横浜)
08年12月5日
中村紀洋(中日→
楽天)
09年1月16日
相川亮二(横浜→
ヤクルト)
国内では、3チーム目の阪神でFAとなった野口が横浜へ、横浜の正捕手だった相川はヤクルトへ。野口は伸び悩んだが、相川は新天地でも正捕手となった。かつて近鉄で主砲を担い、中日に育成契約で入団して復活を遂げた中村は、近鉄に代わってプロ野球に参入した楽天へ移籍したものの、故障が相次いだ。
また、過去にFAで移籍したリードオフマン同士がトレードで“古巣”へ復帰。ダイエーでFAとなった
オリックスの
村松有人が
ソフトバンクへ、近鉄の消滅でFAとなった
大村直之がオリックスへ。移籍した“古巣”で、ともに10年限りで現役生活を終えている。
2年間で3投手がメッツへ
09年オフには巨人の
高橋尚成、ヤクルトの
五十嵐亮太がFAでメッツへ。07年に最優秀防御率となった左腕の高橋尚は翌10年2月にマイナー契約を結んで開幕直前にメジャー昇格、速球派リリーバーの五十嵐はメッツを皮切りにメジャー3球団でプレー。のちに高橋尚は
DeNA、五十嵐はソフトバンクと、前年の海外FA組とは対照的に、古巣とは別のチームで日本球界へ復帰を果たしている。
【2009年オフのFA移籍】
11月24日
藤本敦士(阪神→ヤクルト)
11月25日
橋本将(
ロッテ→横浜)
12月8日
藤井秀悟(
日本ハム→巨人)
一方の国内FA。出場機会を減らしていた阪神でFAとなった藤本は新天地でレギュラー定着も、夏場に離脱、その後は代打に。08年オフに獲得した野口が正捕手に届かず、2年連続で捕手を獲得した横浜だったが、橋本も期待に応えられなかった。
ヤクルトで01年に最多勝となった藤井は2チーム目の日本ハムを戦力外となってFA宣言。巨人で左の先発として7勝を挙げるも、11年オフにFAで加入した
村田修一の人的補償でDeNAへ放出され、長く低迷を続けていたチームを先発の一角として支えて意地を見せた。
写真=Getty Images