週刊ベースボールONLINE

中畑清コラム

中畑清が語る松井秀喜 「だれもマネできない雰囲気。とんでもない選手だよ」

 

巨人コーチ時代の中畑(左)と巨人選手時代の松井


 松井秀喜と初めて会ったときの感動、いまでも忘れないね。1993年のキャンプ初日。態度がハンパじゃない。もう威風堂々。この世界で10年、20年メシ食ってきました、みたいなさ。状況に脅されない。ドーン! と構えているんだよ。あの雰囲気はね、だれもマネできない。

 それで、フリーバッティングでさ、ライナーでガーン! と打ってガンガンガンガン場外に消えてくんだよ。振り遅れた打球はレフトのスタンドにインして。みんなその打球を目で追って「おぉ? おぉ?」って。1年目の選手だぜ? 俺ら何年メシ食ってきてんだよ。そのプロ野球コーチが「おぉ?」って、とんでもない選手だよ。

 でも、松井にもそれなりの欠点があったの。体全体の関節が全部硬い。ヒジ、肩、足首、ヒザ、股関節と。ロボットが打っているみたい。やっぱり実戦が始まってみたら左ピッチャーや変化球にまったく対応できない。体に柔軟性がなくて技術的に対応能力がない。で最初から一軍は無理だというふうになったら長嶋茂雄監督が「んん〜、キヨシ頼むよ〜」って。俺、一応バッティングコーチだから。だからウチに連れて帰って。

 松井にやらせた練習が、柔軟性を持たせるために、中腰に高さをキープしたまんま、ヒザ、足首全部を使ってローリングしながらリズミカルに素振りをさせた。これを松井はできない。もう上体だけで下半身は使えないから。目標がセッティングできたらね、松井はもうぶっ飛ぶまでやるんだね。俺ほっといたんだよ。そしたら1時間も続けていて。それで、そのままね、バターンと前に倒れてね。それを毎日やらせたの。そしたら徐々に柔軟性が出てきたね。

 食事もウチの料理の手料理。本当ね、アイツ人間性が抜群にいいんだよね。礼儀作法が素晴らしい。だから母性本能をくすぐるというかさ、ウチの母ちゃんが応援したくなるって。スーパースターの大事な条件。人として立派なものをアイツは持っていたね。

 俺がDeNA監督4年目、2015年のキャンプのときに「ゴジ、1回くらい、キャンプに臨時コーチで顔出してくれないか」って。「行けるわけないじゃないですか」って言っていたけど、来てくれて。俺のためにやってくれたわけじゃない。亡くなった奥さんのために恩返しをしたんですって、遠回しに言ってくれる男よ。

写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング