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【MLB】スコット・ボラス代理人は菊池雄星に大型契約をもたらせるか

 

菊池のメジャー移籍にも大型契約を見込めると自信を持つボラス代理人。さて菊池はどの球団と交渉をするのだろうか


 南カリフォルニアの陽光が降り注ぐオムニ・ラコスタリゾート。GM会議の会場で50人以上の野球記者に囲まれ、スコット・ボラス代理人はいつもどおり強気だった。

 このオフのFA市場最大の目玉ブライス・ハーパー外野手について聞かれると「彼がこの年齢までに成し遂げたことをやれた選手はみんな殿堂に入っている。将来の殿堂入り選手をこの年齢で獲得できる機会はなかなかない。しかも彼は人々の憧憬の的で、球団に特別な儲けをもたらすこともできる」と語った。

 9月、ハーパーが在籍していたナショナルズからの10年3億ドルの残留オファーを断った。2000年12月、A・ロッドの10年2億5200万ドルという歴史的大型契約を勝ち取った男は、今現在の記録であるジアンカルロ・スタントンの総額3億2500万ドルを抜く、新たな金字塔を打ち立てようとしている。

 もっともボラス代理人は強気の姿勢を崩さないがゆえに、当てが大きく外れることもある。1年前のFA市場は停滞。彼のクライアントで、1年のクォリファイングオファー(年俸1740万ドル)を蹴りFAになったカルロス・ゴンザレス外野手は1 年800万ドル、マイク・ムスタカス三塁手も1年650万ドルと値を下げてサインした。

 レッドソックスに入って大活躍したJ・D・マルチネスも、当初は少なくとも総額1億5000万ドルと言われていたのに5年1億1000万ドルで妥協。2年目、3年目、4年目の後と、3度もオプトアウト(契約を破棄してFAになる)条項が入る異例の契約となった。

 さて西武菊池雄星だ。ボラス代理人は「オーナーは選手の年齢を見る。FA市場では一番若いピッチャー(27歳)で、真っすぐの速度は一番か二番。需要は大きい。これから強くしていくチームでも、今、優勝を狙うチームでもどこでもフィットする」と売り込む。

 とはいえ問題は、MLBの先発3番手くらいの市場は値崩れしてしまっているのだ。3年前、イアン・ケネディが5年7000万ドル、マイク・リークが5年8000万ドル、ジェフ・サマージャが5年900万ドルと高額の契約を勝ち取った。3人とも通算防御率は4点台、勝率は5割か、それを下回る程度。それでもイニングをたくさん投げ、ゲームは作るというので高額の契約を得た。しかし今、野球の戦い方は変わり、早めに先発を降ろし、5、6回からマッチアップ重視で、ブルペン投手を矢継ぎ早に起用する。

 そのため上記の3人レベルの先発投手に大金を払うのではなく、安いブルペン投手をストックしたほうが賢明となった。そんな中で、菊池は大型契約を勝ち取れるのか。MLBの球団関係者は、彼の日本球界での実績がカブスのダルビッシュ有やヤンキースの田中将大レベルでなかったことはよく知っている。

 しかしながら27歳の若さと、17年にマークした98マイル(約157キロ)の速球は魅力だ。ボラス代理人は強気に、菊池をメジャーでも1番手、2番手になれる潜在能力の高い投手だと、売り込むのだろう。ちなみにボラス代理人はこのオフ、ほかにダラス・カイケル(15年のサイ・ヤング投手)、ジオ・ゴンザレス(通算127勝、防御率3.69)と大物先発左腕のクライアントを持つ。お手並み拝見なのである。
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