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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

追い風はラグーン!? 覚醒した大砲の真価が問われる2019年

 

改修中のZOZOマリンの外野を視察した井上は、本塁打増以上に“四番の責任”を果たすことを誓った


 ついに、ようやく――。誰もがそのポテンシャルを認めながら、5月の声を聞くころには毎年のように失速。そんなシーズンを繰り返してきた春先だけの“春男”。しかし、勝負の5年目。井上晴哉はついに“春男”から脱皮して完全覚醒を果たし、ロッテの四番の座に君臨した。

 4年間で計111試合、4本塁打、34打点だった男が、今季は133試合で打率.292、24本塁打、99打点。会見の席上では「え!? そんなにもらっていいの?」とおどけたが、約3.7倍増の推定5000万円での契約更改は納得の数字だろう。

 眠れる才能が突如、目を覚ました理由は、もちろんいくつもあるのだろうが、技術面では金森栄治前打撃コーチ(来季は楽天の一軍打撃チーフコーチ)と井口資仁監督からのアドバイスが大きかったという。「(昨秋の)秋季キャンプから金森コーチのボディターン(体の軸回転)で一気に回れという指導が土台になり、シーズンに入ってからは井口さんのアドバイスもしっかりとかみくだいて数字を残すことができた」と井上自身は振り返る。

 では、指揮官のアドバイスとは何だったのか。それは「ベースの上だけを意識すればいいのではないか」ということだった。「ベース板の上にボールを呼び込んで、そこでだけ力を入れる。ボールをとらえる瞬間にだけ集中するということです」と井上はその意味を説明する。

 その結果、井上のスイングは目に見えて大きくなった。フルスイングで振り切っているように見えるのだ。本人は「ボディターンを使ったスイングの結果として振り切っているように見えるのだと思う」と言うが、昨季までは結果を求めるあまりバットをボールに当てにいっているように見えていた。ベース板の上で、つまりインパクトの瞬間に最大の力が発揮されているようには見えなかったのだ。

 ベース板の上で、インパクトの瞬間にだけ力を入れる。フォロースルーの動きはインパクトまでの運動の結果に過ぎない。無理にバットをボールに当ていこうとはせず、インパクトの瞬間に力を入れることだけに集中しても、しっかりとコンタクトできる能力が自分にはある。井上はそのことに気づけたのだろう。金森&井口の師弟コンビが、孫弟子・井上を覚醒に導いたのだ。

 しかし、真価が問われるのは来季だ。そのことは井上自身が誰よりも分かっている。月間MVPに輝いた7月の下旬、「打率は下がるかもしれないけど、ホームランも打点も減ることはない。数字的に見ても、過去の僕からしてみれば怖いものはない」と話していた男が、シーズン後には「四番はチームの顔。(今季は)四番の責任感はあったが気負わずにできた。その姿勢は大事にしていきたい」と、メンタル面でも一つ上のステージに上がったことをうかがわせていた。

 追い風になるのが“ホームランラグーン”だ。ZOZOマリンは現在、改修の真っ最中で、目玉のひとつがいわゆるホームランテラス。来季は外野フェンスが最大4メートル前にせり出される。契約更改の会見後にヘルメットをかぶって改修中のZOZOマリンの外野を視察した井上は、「(今季は)フェンス直撃がけっこうあったので、今年と同じようにできれば(本塁打は)増えると思う」と、本拠地の“変身”を歓迎した。

 キャッチーな数字は「30」だが、井上自身のターゲットは「100」、そして「チームの勝利」だ。周囲が期待するのは、球団の日本人選手としては1986年の落合博満氏以来となる30本塁打超え。それでも来季の目標を問われた井上は、「チームが勝てるように100打点を目指して。(今季は)99で止まってしまったので3ケタにいきたい」と口にしている。

「“日本一”の四番になれるように。自分の役割を果たせるように頑張りたい」。先の会見ではそんな言葉も飛び出した。前後のやり取りからすれば、それは「“日本一チーム”の四番になれるように」「マリーンズを日本一に導けるように」という意味なのだが、「“日本一=日本最強”の四番になれるように」と、とらえられたとしても誰も笑うことはできない、そんな真価の証明を2019年のカモメの四番には期待したい。

文=杉浦多夢 写真=BBM

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