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プロは攻撃時と守備時でスパイクを履き替える?/元ソフトバンク・柴原洋に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は外野守備編。回答者は現役時代にゴールデン・グラブ賞を3回獲得した、元ソフトバンク柴原洋氏だ。

Q.プロ野球の選手はスパイクを攻撃のときと守備のときで履き替えているという話を耳にしたことがあります。攻撃用スパイクと守備用スパイクにはどのような違いがあるのでしょうか。(東京都・54歳)



A.絨毯のような人工芝だった以前は履き替えました


イラスト=横山英史


 近年は人工芝の進化やスパイク自体の進化もあり、あまり攻撃用と守備用のスパイクを明確に分けている選手は少なくなったように思いますが、私が現役のころは確かに履き替えていました。といっても、履き替えていたのは人工芝の球場だけ。天然芝の球場ではいわゆる金属製の歯(素材は金属に限らないと思いますが、ここでは便宜上、「金属製」とさせてください)がついたものを攻撃時も、守備時も履いていました。

 人工芝の球場でスパイクを履き替えていたのは、現在のような質の良い人工芝とは異なり、当時は緑の絨毯(じゅうたん)のような人工芝がコンクリートの上に敷き詰められているだけでしたから、土や芝をグリップする用途で作られた金属製の歯のスパイクではツルツルと滑ってしまうからです。雨の日は特にそうで、思い切ってチャージをかけることができません。ただ、打席周りやベース周りは土ですから、攻撃時には鉄製の歯のスパイクを履き、守備時にはトレーニングシューズのような、ゴムの細かく小さいボツボツがソールについたスパイクに履き替えていました。

 困ったのは走塁のときです。ベース周りは土ですが、そのエリアを出ると走路の途中は“絨毯”ですから、ベースを回ったあとに大きく膨らんだりすると、ツルッと滑ってしまうこともあり、かなり気を使ったことを覚えています。

 また、守っていて、チェンジとなり、次の回の攻撃で先頭打者だったりすると時間がない。特に私のように外野手だとベンチまで距離があり、時間がかかりますから、速やかに履き替えられるようにマジックテープで着脱が簡単なものを選ぶ選手が多かったですね。ちなみに私は守備時はマジックテープのスパイク、攻撃時はヒモのスパイクを履いていました。

 しかし、いわゆる“フィールドターフ”に代表される、より天然芝に近い長さの芝で、チップが敷き詰められている現在の人工芝は、天然芝と同じような感覚でプレーできるので、履き替える必要がなくなりました。また、スパイクの進化で金属製ではなく、さまざまな素材の歯が開発され、ポイント式を好む選手もいて、土でも人工芝でも天然芝でも1つのスパイクでストレスなくプレーできるようになっているので、“履き替え”は過去のものになりつつありますね。

●柴原洋(しばはら・ひろし)
1974年5月23日生まれ。福岡県出身。北九州高から九州共立大を経て97年ドラフト3位でダイエー(現ソフトバンク)入団。11年現役引退。現役生活15年の通算成績は1452試合出場、打率.282、54本塁打、463打点、85盗塁。
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