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2018シーズン総括

検証!リクエスト制度の是非/2018シーズン総括

 

プロ野球は2018年シーズンから判定に異議がある場合、監督が審判に映像による検証を要求できる「リクエスト」制度を導入した。投球をせずに敬遠(故意四球)となる「申告敬遠」とともに新たな試みとして注目されたが、現場とファンに受け入れられたのか。シーズンを振り返った。

判定が覆ったのは約3割


リクエストを要求する巨人高橋由伸監督


「審判の判定は、絶対かつ不可侵」というかつての不文律は、21世紀を迎えてどんどん変わりつつある。サッカー、テニス、大相撲などの各競技に遅れをとったプロ野球も、大きな波に逆らえなくなってきた。

 プロ野球では2017年まで、審判団が必要と判断した場合のみ映像によるリプレー検証が行われていた。だが、先に14年から「チャレンジ」制度を取り入れているメジャー・リーグ機構(MLB)に倣い、「リクエスト」と名称を変えて導入。地方球場を含むレギュラーシーズンの全試合が対象となった。これまでは審判団が判断した場合に限ってリプレー検証が行われていたが、ベンチの意向により検証できることになったのは画期的だった。

 リクエストは本塁打かどうかや、すべての塁でのアウト、セーフの判定に対して要請できる。各チームに1試合で2回ずつ権利があり、延長戦では1回だけ行使が可能。判定が覆れば回数にカウントされない。日本野球機構(NPB)はシーズン終了後の10月18日、セ、パ両リーグ858試合で、494件のリクエストがあったと発表した。セが251で、パが243とほぼ同数。判定が覆ったのは、32.8パーセントの162件だった。

現場はほとんど肯定的


 開幕前までは「試合が間延びする」などの理由から導入に懐疑的な声も多かったが、1シーズンが終わってみれば、おおむね好評だった。「より判定に正確を期すためにも、リクエスト制度は良かったと思う」と話すソフトバンク工藤公康監督をはじめ、ほとんどの監督、コーチらが肯定的。開催全試合の半分以上で監督がリクエストを要請したという事実は、新ルールが違和感なく受け入れられた証明と言えよう。

 エンターテインメント性の創出という視点からも、決して悪いルールではなかった。リクエストによる検証作業中、球場には審判団が見ているものと同じ映像が大型ビジョンに何度も流された。観客は際どいプレーの映像を自身の目で確認し、審判の最終判断をワクワクしながら待つという、これまでに体験できなかった時間を持てるようになった。

 1試合の平均時間は17年シーズンと比べて5分長い3時間18分。NPBでは「リクエストによる影響との関係は分からない」としているが、熱戦に水を差す間延び感はない。

 開幕直後、ロッテ井口資仁監督が「アウト、セーフと分かっていても、試合の流れを変えたり、間を取ったり、いろんな意味で使える」と発言。NPB関係者は「本来の趣旨とは違う」と眉をひそめたが、ルールに振り回されず、プロとして逆にうまく活用するためにも、そういう発想は必要だろう。

事態が紛糾したケースも


 初めてのルールで、適用の手順等が徹底されなかったケースも出た。6月22日のオリックス対ソフトバンク戦(ほっともっと神戸)の3対3の延長10回、二死一塁。ソフトバンクの中村晃が放った右翼ポール際への打球がファウルと判定されたが、ソフトバンクベンチのリクエストで判定が本塁打に訂正され、ソフトバンクが勝利した。

 試合後、審判団が映像を見直してファウルだったと認めたことで事態が紛糾。機材等の問題でリプレー検証が難しいケースでの対応方法や、「試合中の結論が最終決定」というルールの徹底を図るなど、来季に向けての反省点は多い。

 MLBでは総額数億円をかけてチャレンジ制度をサポート。球場に20台以上もの専用カメラを設置し、ニューヨークにあるオペレーションセンターの専用スタッフが衛星回線で確認、球場の審判に検証結果と最終判定を伝えるという方式をとっている。日本のリプレー検証は一般視聴者用のテレビ中継の映像のみで行い、最終判断を球場の審判団に委ねるという違いがある。

 さらにリクエスト制度をより正確に円滑に運営するためには、それなりの人材と費用がかかる。MLBでは放映権をリーグが管理するなど財源の一括化が図られているが、そうでない日本ではどうすればいいのか。21世紀の新制度を考えると、プロ野球が今後検討しなければならないことも浮き彫りとなってくる。

写真=BBM
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