プロ野球の歴史の中から、日付にこだわってその日に何があったのか紹介していく。今回は1992年12月22日だ。
1988年、ドラフト1位で立大から
ヤクルトへ入団した長嶋一茂だったが、5年間で119安打、13本塁打と結果が出なかった。92年はアメリカへ野球留学し、出番はなし。その年のオフ、父・茂雄の巨人監督復帰が決まり、一茂の巨人への無償トレードが決まった。
しかし、一茂の顔から笑顔は出ない。12月22日の巨人入団会見でも厳しい表情を一度も崩さなかった。
「笑っている状況じゃないでしょう。とにかく頑張るしかない。それだけです」
父が指揮を執る、あこがれの巨人への入団。本来ならうれしいはずのトレードなのに、一茂は「まだ心の整理がついていません」と言いながら、終始うつむき加減だった。
“父子鷹”の誕生は、父が仕掛けた息子への最後の“手段”と言ってよかった。「もし、ダメなら自分の手でユニフォームを脱がす」とまで球団を説得して、ようやくトレードは実現したのだ。もし、父の下でもダメなら引退するしかない。
一茂にしてみれば、父の“愛情”をどう受け止めていいのか、すぐに答えを出せなかったのかもしれない。
写真=BBM