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川口和久WEBコラム

適応力が武器の頭脳派投手・内海哲也/川口和久WEBコラム

 

今季は5勝を挙げ、久々の完封もあった。力はまだある


 巨人の左腕・内海哲也炭谷銀仁朗の人的補償で西武に移籍した。
 オリックスのドラフト1位を蹴って、巨人愛を貫いての入団。15年間で133勝を挙げた生え抜きがプロテクトから外れていたんだね。
 無情と言えば無情だが、原辰徳新監督のチーム改革に向けた強い覚悟も感じた。

 俺が巨人にコーチで入ったのは、2011年。
 内海にとっては分岐点だったと思う。

 2006年から3年間、2ケタ勝利を挙げたけど、徐々に球速が落ちてきたのもあって、10年は11勝ながら防御率は4.38まで悪化していた。
 そこで俺がコーチとなって……と自慢話をしたいところだが、残念ながらほとんど何も教えていない。

 すでに自分なりの技術を確立していたし、巨人のエースとしてやってきたプライドも強かった。
 しかも、いわゆる優等生タイプで後輩の面倒見がよく、練習も誰に言われなくても、黙々とやっていたから怒る必要もまったくなかったしね。

 ただ、このままなら年齢に応じて少しずつ勝ち星が減っていくんだろうなと思っていた。

 そこで幸運があった。
 統一球。要は誰が打っても飛ばない球に突然、変わったんだ。  こっちが本当と言えば本当なんだと思うが、パワーヒッターが完ぺきに打って、やっとホームランになる球。それまでは、特に東京ドームだと、当たり損ねの打球でもフラフラ飛んでホームランになったりしたからね。

 内海は統一球にもっともうまく適応したピッチャーと言えるんじゃないかな。
 ストライク優先で、フォームや緩急で打者のタイミングをほんの少し狂わせるピッチングに変えた。「この球は真ん中でもタイミングが合わなきゃ長打はない」って割り切ったピッチングだね。
 誰でもできるわけじゃない。度胸も投球術も必要。内海はそれにすぐ適応し、そこから2年連続最多勝になった。

 ただ、その後、ボールメーカーの在庫が一掃されたのか何だか知らないけど、予告もなしに14年くらいから、また球が昔みたい飛ぶようになり、内海もまた、なかなか勝てなくなった。

 それで今度はパ・リーグ。
 俺はこれも一つ、転機になる可能性があると思う。世代交代が進む巨人の中では、どんどん隅に追いやられる可能性もあったが、新天地では、最初だけかもしれないけど、必ずチャンスがもらえるはず。
 交流戦はあるけど、データが少ない他リーグ移籍で生まれ変わる投手も少なくないしね。

 内海はたぶんストレートはもう140キロも出ないとは思うが、あのチェンジアップや、適応力の高い、頭脳的なピッチングは、みんなブンブン振ってくるパ・リーグの中で、それなりに通用すると思う。自慢の適応力を発揮するチャンスだよ。
 データで見ても過去の交流戦は、通算防御率2.81と並みながら、18年の1.50を含め1点台が6年あるしね。

 もちろん、もう年齢も年齢だから、完ぺきに抑えるのは無理にしても、先発のコマ数が足りない西武の中で、先発ローテを守りながら7回3失点くらいではやっていけるんじゃないかな。
 そうなると、もう1つの運が、西武打線。浅村栄斗は抜けたが、あの破壊力はすごい。なんといっても防御率3.81の多和田真三郎が16勝できるんだからね。
 巨人みたいに「勝たなきゃ」という重圧も少ない明るいチームカラーも、いまの内海にはプラスになると思う。

 江夏豊さん(阪神─南海)はいるけど、過去セのエース格がパに移籍した例は、ほとんどない。もうピークは完全に過ぎているけど、ここからの2年くらいが「投手・内海」の集大成になるのかもしれないね。期待してるよ。

写真=BBM

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週刊ベースボール編集部

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