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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

日本一を呼び込んだ内海哲也の印象深いピッチング

 

2009年、日本ハムとの日本シリーズ第6戦(札幌ドーム)で雄たけびを上げる内海


 巨人時代の内海哲也で印象深いピッチングの1つが2009年、日本ハムとの日本シリーズ第6戦(札幌ドーム)だ。

 この試合前、内海は原辰徳監督に監督室に呼ばれて、こう告げられた。

「本心では先発をさせたいが東野(峻)に任せる。ただ、東野が投げた瞬間から自分がマウンドに上がっている気持ちでいてくれ」

 第2戦で先発も3回途中4失点KOを食らっていた内海は王手をかけて迎えた一戦で、先発の機会を失ってしまった。「挽回のチャンスはいつか来る」。燃えたぎる思いを心に宿していたが、それを放出する機会はすぐにめぐってきた。

 初回二死、東野が高橋信二の打球を右手甲に受けて降板。「助け舟を出す状況になったら、お前を出す」と指揮官に言われていたとおり、内海が緊急登板することになった。内海は毎回のように走者を出したが、要所でコーナーにボールを決め、失点を許さない。5回には一死二塁で三番・稲葉篤紀、四番・高橋をいずれも見逃し三振に斬って取り、ガッツポーズ、雄たけびを上げた。

 6回途中まで無失点と日本一に貢献。交代の際、マウンドまで原監督が足を運び、感謝の念を伝えられるという最大の敬意も払われた。9勝止まりに終わるなど、悔しいシーズン。しかし、「終わり良ければすべて良し」と左腕は笑顔を浮かべた。

 翌年、開幕前の「エースを狙え!」特集で内海にエースの条件を聞いた際、「まずはチームから、もちろんファンからも信頼される投手にならなければいけません」と答えた。さらに「信頼される投手と重なるかもしれないですけど、愛される投手にもならなければいけないと思います。試合以外の部分で、普段の行いや言動も大切。チームメートやファンから好かれる存在にならないといけないでしょう」と続けた。

 11、12年と連続最多勝を獲得して名実ともにエースとなったが、14年以降は2ケタ勝利に届かないシーズンが続いた。しかし、この“愛される”という部分は不変だったように思う。

 今年から西武で新しい野球人生が始まる。内海がどのような生きざまを見せてくれるか、楽しみだ。

文=小林光男 写真=BBM
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