昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、平日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 衣笠祥雄、プロ初本塁打
今回は『1965年9月13日号』。定価は50円だ。
広島の新人・
衣笠祥雄が8月22日の
阪神戦(広島市民)で
村山実からプロ初本塁打を放った。
「まるで夢のようです。ホームベースを踏むまで信じられませんでした。僕はホームランはウエスタンでも打っていません。それが村山さんから打てるなんて」
興奮気味に語る衣笠。対して村山は、
「すごいバッターだよ。打つ前から迫力があったね。打たれたのは失投じゃない。向こうの勝ちだ」
と大絶賛していた。
同じようなやり取りがホームランダービーでトップを走る阪急・
スペンサーと西鉄の新人右腕・
池永正明の間にもあった。
同じく22日の試合でスペンサーは一死一、二塁で代打で登場したが、池永の前にレフトフライに打ち取られた。さぞやスペンサー、カッカしているかと思ったら、
「池永はいいピッチャーだ。球もいいものを持っている。若いのにあの度胸は立派だ。きっと大投手になれる」
と大絶賛。
実は他球団からの四球攻めにノイローゼ気味。打撃も急降下し、スタメンを外れることも多くなっていただけに、若き池永の真っ向勝負がうれしかったらしい。
なおスペンサーは24日から戦線離脱。守備中に二度、股間を打ったため、大事なところがタヌキのごとき腫れてしまったのだ。それでもスペンサーは練習には復帰したが、かばったのが災いしたのか右太ももを肉離れ。ついに休場となった。
打撃不振に苦しんでいた巨人・
王貞治が8月29日の大洋戦で28日ぶりの25号を放った。再び三冠王へ快進撃となるのか。
また、王と並び、ほぼ優勝確定と言われる巨人のMVP候補が「8時半の男」
宮田征典。
8月24日現在、巨人の17勝(3敗)、防御率1.76と勝ち星、防御率でリーグトップに立っているが、「西の8時半の男」とも呼ばれているのが、広島の
竜憲一だ。
現在14勝でうち12勝が救援勝利。3年前に東映をクビになった後、広島で花開いた苦労人でもある。ここまで2年連続チーム最多登板で、これが3年連続になるのは、ほぼ間違いない。
「僕は人がいいから断りきれないんだよ。投げてくれ、と言われるとね。そりゃじっくり休みたいこともあるが、そんな贅沢なことは言っておれん」
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM