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週刊ベースボール60周年記念企画

倒れてもなおスペンサーは訴える/週べ1965年10月25日号

 

 昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

法大の1年生、田淵幸一


表紙は中日江藤慎一



 今回は『1965年10月25日号』。定価は50円だ。

 10月5日、阪急のスペンサーは西宮球場での西鉄戦に出場するためバイクで自宅から阪急線岡本駅に進行中、三差路で食料品店店員のA君(16歳)の運転する軽四輪車に衝突。路上に投げ出された。その後、神戸海星病院に運ばれたが、右足2個所の骨折で全治2カ月と診断された。
 この時点でスペンサーは一度、南海・野村克也に引き離れかけた本塁打も2本差まで急追していた。ようやく背中が見えただけに、かなりのショックだったようだ。
 
 意気消沈のスペンサーの自宅を訪ねると、やはり四球攻めへの恨み節がさく裂した。その中で当時のパ・リーグの主力投手に触れた個所を抜粋する。

小山正明(東京)は日本では有数のピッチャーだと思ってたのに、私にはストライクを投げてくれなかった。彼は打者の裏をかく作戦やいい球を持っているんだから私と真っ向勝負してほしかった。
 好感が持てるのは、尾崎行雄(東映)だ。スピードボールは球界一だろう。おそれることなく、真っ向から勝負してくる度胸には、私も大した男と思ったし、そういうところが好きだった。
 彼のクセは第1球を必ずストライクを取ろうとしてくる。私はこれを狙うのだが、尾崎のほうが私を上回ることがたびたびだった。

 西鉄のルーキー、池永正明は若いのに随分強心臓な感じがした。まだまだピッチングにいい意味でも悪い意味でも若さがあり、これからの投手だろう。いいカーブを持ち、コントロールもいいので、あと3、4年したら日本有数のピッチャーの仲間入りをするだろう」

 第1回ドラフト会議では30人のリスト提出期限が11月4日と迫っていた。
 注目は岡山東商高の平松政次と銚子商高の木樽正明だが、どうやら平松の日本石油入りは固いらしい。ほか駒大の捕手、新宅洋志、甲子園出場はないが、素材は木樽以上と言われる甲府商高の堀内恒夫(※指摘により修正。すいません。1年夏全国出場はしているが、出場校が多く、西宮開催もあった年で甲子園の土は踏んでいない)、左腕では育英高の鈴木啓示も話題になっていた。

 ただ、それ以上にスカウトが熱くなっていたのが、まだ1年生ながら法大の三番を打つ田淵幸一だ。身長183センチの大型捕手で、すでにホームラン3本。立大時代の長嶋茂雄が作った東京六大学記録の通算8本塁打を抜くのも時間の問題と言われている。

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM
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