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川上哲治の水平スイングの秘密特訓/週べ1965年11月1日増大号

 

 昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

犬にひっぱられ川上トリプル3目前?


表紙は巨人川上哲治監督



 今回は『1965年11月1日増大号』。定価は10円上がって60円だ。
 すでにほぼ確定していたのだが、10月13日、巨人のセ・リーグ優勝が決まった。
 この日、巨人は対サンケイ戦が雨で中止となったが、中日が川崎球場での対大洋戦で敗れたため、自動的に決定した。

 関係者はこの日、午後10時から日本テレビで祝勝会。背広姿の川上哲治監督がスタジオの中で宙を舞った。
 そこで川上監督についてのさまざまな逸話も紹介されていたが、あまり優勝とは関係ない逸話を2つ紹介しておこう。

 川上監督と言えばダウンスイングだが、現役時代の連続写真を見ると、球をしっかり引き付けての美しいレベルスイングだ(1リーグ時代。50年代後半のものはそれまできれいではない)。
 その秘密に触れた個所があった。
 大村小学校時代の話だ。川上に野球の指導をした土肥先生は「哲治、バットはシャープに振れ、大物を狙ってはいかん」と言い、一つの特訓をさせた。
 竹を2本立て、そこに上下に糸を張り、素振りでその間を通すというものだ。最初はストライクゾーンの幅でやっていたが、最後にはバットの幅で行い、糸にかすることなく、振り抜くようになった。
 まさに神技だが、小学生と考えると、やや大げさになっているような気もする。

 これは本当かもと思ったのは、1950年の話だ。実は、この年、川上は打率.313、29本塁打、34盗塁とトリプル3に迫った。
 ただ、49年の盗塁は9。突然増えたのが不思議ではあった。

 川上は足が遅いわけではなかったようだが、「打てばいいんだろ」とばかりあまり盗塁に熱心ではなかったはずだった。

 変わったのは三段跳びの選手で64年には東京オリンピックで選手団団長も務めた大島鎌吉に、
「川上君、スポーツマンは何事もランニングだ。いくつになってもランニングを怠ってはいかん」
 と言われてからだという。川上が頑固さの半面、球界以外の一流と言われる人の言葉に影響されることがあったらしい。
 そこから突然、「足を速くするための特訓」を始めたのだが、これがすごい。2月のキャンプインまで毎日、縄で愛犬の首と自分の体をつないで走ったという。

 西鉄が揺れ始めていた。
 西亦次郎代表が「独立採算でできるくらい合理化したい」と発言。ベテラン選手の放出、外国人選手の整理、二軍の廃止とウエスタン・リーグからの脱退を検討中と語った。
 炭鉱の斜陽化に加え、鉄鋼不況で北九州の経済自体が冷え込み、西日本鉄道も大きな痛手を負っていたことが背景にあるらしい。

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM

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