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“伝説のアナウンサー”志村正順さんについて山川静夫さんに聞いた

 

元NHKアナウンサーの山川静夫さん


 発売中の『ベースボールマガジン』別冊早春号(3月号)では、「野球殿堂の204人」が大特集されている。

 野球殿堂の創設は、長嶋茂雄のデビュー翌年の1959年だけに、今年はちょうど60周年という節目の年。球界の中で最高峰の顕彰と言っても過言ではない。

 特徴的なのは、かつてユニフォームを着ていたプロ野球選手ばかりが顕彰の対象ではないということだ。たとえプレーヤーでなくても野球にはさまざまな貢献の仕方がある。審判、コミッショナー、用具メーカー、メディア、記録員、アマチュア関係者。それぞれの分野で球界の発展に尽力した人々を未来永劫、称えるというのは、野球というジャンルに対して、いかに多くの人々の夢とロマン、情熱、魂が注がれたかを物語る。

 今回の特集にあたって、腐心したのは、その多くが鬼籍に入っていることだ。時代をさかのぼればさかのぼるほど、本人はおろか、同時代を生きた語り部も少ない。そうしたなか2005年に殿堂入りした伝説のアナウサー、志村正順さんの功績について、紅白歌合戦の白組司会として活躍した山川静夫さんに“志村節”を語り継いでくれた。

 長嶋茂雄がサヨナラホームランを打った1959年の天覧試合をはじめとして、志村さんは数々の名実況を残した。解説者とのコンビによるスポーツ中継スタイルを確立させた嚆矢(こうし)も志村さんだった。「なんと申しましょうか」でお馴染みの小西得郎さん(元松竹監督)、大相撲なら神風さん。スポーツの発展にメディアの力は欠かせない。プロ野球の魅力をメディアという立場で伝えた志村正順さんは、どんなアナウンサーだったのか。NHKの採用試験を受けた際の面接官だった志村さんの人となりを、山川さんはエピソードを交えて同誌の中でたっぷりと語ってくれた。

 山川さんは志村さんから受けた薫陶として「『伝える』ことは誰でもやっています。でも、本当に大切なのは『伝わる』ことなんです」と、アナウンサーの極意を披歴。これは、われわれメディアに携わる人間にとっても、いや日々の人間関係においても非常に大切なことだと、目からウロコが落ちる思いがした。

 余談になるが、山川さんは、桑田圭祐とユーミンが「胸騒ぎの腰付き」という奇跡の競演で高視聴率をマークした昨年の紅白歌合戦について「時代が変わるのは仕方がありません」としながら、「でも、やはり『歌合戦』という大前提は守ってほしいですね」と、大御所アナとしての金言を忘れなかった。

ベースボールマガジン3月号


文=佐藤正行(ベースボールマガジン編集長) 写真=BBM
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