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2020年のドラフト候補、華麗な遊撃守備を誇る九州の“牛若丸”

 

九産大の3年生遊撃手・児玉は165センチ、60キロ。昨年に続き、侍ジャパン大学代表における欠かせないプレーヤーとなりそうだ


 阪神の永久欠番「23」を背負った吉田義男は現役時代に「牛若丸」と言われた。華麗かつ堅実な遊撃守備を称賛された呼び名だ。167センチ、56キロ。小柄ながらも粘り強い打撃も売りで、まさしく「達人」の称号にふさわしい昭和の名選手であった。

 大学球界にも注目の「牛若丸」がいる。九産大の3年生・児玉亮涼(文徳高)である。

 165センチ、60キロ。九産大・大久保哲也監督は冗談交じりに「実は165もないですよ」と苦笑いした後、真顔でこう言った。「先日、合宿所で夕食をのぞいたら、あまりに食が細い。吉田さん、若松さん(若松勉、元ヤクルト)も小さくてもガチッとしていた。もっと強い体をつくらないといけない」と期待が大きいからこそ、要望することも忘れない。

 1月15日の全日本大学野球連盟の監督会。全国26連盟の加盟大学の監督・コーチら約180人が集結する場で、侍ジャパン大学代表を率いる亜大・生田勉監督は、昨年の国際試合の報告をした。日米大学選手権(米国開催)、ハーレーム・ベースボールウイーク(オランダ開催)を通じて「投高打低」の傾向が顕著であったという。

 大学の国際大会における「攻撃力不足」は今に始まったことではないが、生田監督は具体名を挙げて絶賛した選手がいた。児玉である。2年生だった昨年、初めて日の丸を背負い、二番・遊撃手として攻守で持ち味を発揮した。

「150キロを超える直球、スライダー、チェンジアップにも対応していた。小技の利く選手」と全幅の信頼を得ていたのである。

「自チームの試合を見ていただいた中で、選んでいただけたと思っている。自分の役割を果たしてきただけ。小技、守備は100パーセントで、足を絡めていかないといけない」

 20歳であるが、すでに、職人気質のコメントがスラスラと出てくる。50メートル走5.9秒の俊足を生かした走塁技術の高さも、生田監督が評価する点だ。

 打席における児玉の最大の武器は、好不調に左右されない「選球眼」と「出塁率」だ。つまり、どんな形でも良いから塁に出ようとする姿勢により、四球が多いのである。「投手に球数を投げさせるのが役割」とバットを一握り短く持ち、コンパクトに振り抜くからスピードボールにも力負けしないのである。追い込まれてからは、逆方向を強く意識。対戦する投手としては、それこそ厄介なタイプだ。

 守備においては派手なプレーを好まず、アウトに取れる打球を、確実にアウトにする。練習ではシートノックから実戦を想定して、基本に忠実なプレーを心掛けている。指揮官としては、これほど使いやすい選手もいない。

 将来の夢は「プロ野球選手」も、現状では「体が動く限りは野球を続けていきたい」と慎重に語る。気が早いことは承知の上で、2020年ドラフト、平成から新元号を迎える玄人好みの「牛若丸」から目が離せない。内野手補強が必要なチームとしては、獲得しておくべき逸材であると思う。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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