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巨人・岡本和真選手のサード守備をどう評価している?【後編】/元中日・井端弘和に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は内野守備編。回答者は現役時代、7度、ゴールデン・グラブ賞に輝いた、元中日ほかの井端弘和氏だ。

Q.2019年シーズンから巨人の岡本和真選手がサードに挑戦しています。ブレークした18年は主にファーストでしたが、日米野球では5試合でサードを守っています。巨人、そして侍ジャパンで指導してきた井端弘和さんは、岡本選手の守備をどう評価していますか。(鹿児島県・43歳)



A.手投げ、大切にいった末のダーツ投げを一塁けん制とイスに座ってのスローイングで改善


イラスト=横山英史


 最終回です。肩も強く、スローイングは比較的良いほうだった岡本選手ですが、初めに話をした際には「スローイングに自信がありません」と話していました。

 確かに、よく見てみると、体が前に流れてしまうクセが散見されました。簡単に言ってしまうと、送球ミスを恐れた手投げ。これでは逆に、腕を振ることができないので、大切に手投げにしたつもりでも、タイミングが合わなければ引っ掛けるか、場合によっては抜けてしまいます。大切に行き過ぎて、まるでダーツを投げるように、狙いを定めてヒジから先だけでヒョイと投げていたこともありました。このような手投げや、ダーツ投げは、プロの世界でもスローイングに自信がない選手に見られる悪い癖で、これではスローイングは悪くなる一方です。

 これらの悪癖を矯正するため岡本選手には、一塁へのけん制球の練習を課しました(もちろん、マウンドからではない)。右投げの選手が一塁へけん制を投げようとすると、右腰をしっかりと一塁方向へ向けて(私は右腰を引っ張ると表現しています)投げないと、良いボールは行きません。また、一塁へ投げるときの足の運びもスローイングの矯正に最適で、軸で回らないと投げられません。

 バッティングと同じで右足体重であることも意識させました。つまり、上半身に頼るのではなく、下半身主導で投げる技術が身に付くわけです。岡本選手は昨季の3割、30本塁打、100打点が物語るように、バッティングでは下半身がしっかり使える選手です。すぐにこの動きも身に付け、またイスに座らせて投げることで小さくなった腕の動きを、しっかりとトップを作って投げる形に修正(イスに座って下半身が使えない状況で投げると、ダーツのような小さな動きでは遠くに投げられませんよね?)。捕球時のステップワークの向上と相まって、安心して見ていられるようになっていきました。

 昨秋の日米野球ではサードで起用しましたし(めちゃくちゃ緊張していましたね)、今季から巨人でもサードに挑戦しているようです(結局、ファーストも多いようですが……)。このまま2〜3年、基本に忠実にやってくれれば、染みつくはずですし、そうなってしまえばもう守備は大丈夫。横着せずに頑張ってほしいですね。

<「完」>

●井端弘和(いばた・ひろかず)
1975年5月12日生まれ。神奈川県出身。堀越高から亜大を経て98年ドラフト5位で中日入団。14年に巨人へ移籍し、15年限りで現役引退。内野守備走塁コーチとなり、18年まで指導。侍ジャパンでも同職を務めている。現役生活18年の通算成績は1896試合出場、打率.281、56本塁打、410打点、149盗塁。
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